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21:07


「おかしいね」


人気のない夜道を歩きながら、名前はぽつりと呟いた。


「誰かがいた痕跡はあった。けれど殺気はなかったし、気配もなかった。………、」
「金工室のおばけーってやつか?」
「…それはないと思う、けど」
「でも今日沢田達が幽霊だって騒いでたあれ、名前じゃあないんだろ」
「当たり前だよ……流石にさぁ、出夢と殺り合った後に武器作る体力なんて…」


だよなぁ、なんて呟きながら歩く出夢の後を追いながら、明るくなり始めた空を見上げた。


「匂宮出夢、罪口名前だな」


殺し名は殺気に反応する。だからこそ銃なんぞは通用しないのだし、"殺した"り、"殺された"り、そんな殺意の世界に生きて行くためには簡単に隠せてしまう人間固有の気配よりも、隠すことなどできない殺気に頼った方が長く生きることができるのだ。

殺し名の中でも一段と飛び抜けていた匂宮出夢。呪い名でありながら、その戦闘能力は殺し名にも全く劣らぬ罪口名前。それはこの二人にすらも言えることだった。

だからこそ突然の来訪には、その相手がプロだとすれば対処はできても察することはできない。
電信柱の影から聞こえた声に視線を向けると、本来ならば喋ることはおろか2本足でしっかりと立つことすら怪しいはずであろう年頃の子供。

二人は一瞬だけ視線をあわせて、沈黙で返答した。


「ファミリーに入らねぇか」


沈黙を肯定と見なした赤ん坊は、そう言葉を放った。しかしその意味を理解できたのは出夢だけで、それを察した名前はこの状況を静観していた。

「僕はどこにも入る気はねぇよ。僕の妹だって一緒だ。あいつも僕も、もう自身を危険に晒すつもりはないね」
「どこにも入らずに生きていけると思ってんのか?」
「思ってるさ」

そこで両者の視線が一所に集まった。静観どころかもはや聞いてすらいなかった、名前へと。

「あー…私も、…入らない。正直何の話かはわからないし、できるだけ危ないことはしたくないから」
「…僕説明してなかったっけ?マフィアのこと」
「何も聞いてないし、何も知らない」
「あちゃー、じゃあ名前ってば一応一般人だったわけだ。…で?ならどうしてふつーの女子中学生の名前を誘った?仮にも最強名乗ってるくらいだ、知らなかったわけじゃあないだろ?」
「お前と知り合いで、かつあそこまで殺り合えるやつは普通とは言わないぞ」

ライフルか、と呟いた名前にリボーンは一瞬で銃を向けた。

「だが気配は裏の人間じゃねぇ。しかしあんだけ血を浴びるような戦いをするくせに血の臭いがしねぇ。罪口名前、お前は不可解すぎる」
「危険は全て引き込んでしまえってことかよ、止めた方がいいぜ。僕はまだいいが、こいつは人を綺麗に殺せない。沢田やその周辺のやつらなんか簡単にびびっちまって、裏で生きていけなくなるぜぇ?」
「…」
「……」
「それでもこいつを入れたいっつーんなら、まぁ止めねぇよ、僕は」

睨み合う2人を見つめながら名前はぼうっとしていた。何も知らないと言ったのだから、このまま解放してくれたっていいだろう、私は早く新しい武器についてをゆっくりと考えたいのだという気持ちを込めてため息をつきながら。
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