long | ナノ


09:41


人は一生に何度嘘を吐くのだろうか。愛してる好きだよ君しか見えない。なんて、そんなもの絶対に偽りでしかないのだと、否定の言葉を投げ掛けられたのなら、その人は一体どうするのだろうか。

信じて欲しいのなら唇で、愛して欲しいのなら指先で、生と死が欲しいのならば躯で、希望が欲しいのならばその頭で。
それぞれに必要なものをその対象に捧げれば全ては丸く収まってしまうというのに。誰も彼も何もわからず黙りこくって、そして言うのだ。あなたは愛を知らないのですね、と。愛は知っている。誰か何かを愛しいと思い慈しむ心、誰か彼かと交わりを持つこと。


…なんてね。そんなことばっかり考えていたのは14年くらい前の話。そんなことに価値を見出だせなかったのも14年くらい前の話。



歳相応の会話や、夢や希望だとかはまだよくわからないのだけれど、誰かを愛したり誰かに愛されたり、誰かと愛を育んだり。
それはとても素敵なことなのだろうと、まだよくわからないながら、憧れを持つ。
例えば、山本や獄寺を見詰める女子。例えば、京子を見詰めるツナ。恋はとても羨ましくて、輝いているように見えた。「名前ちゃんって、匂宮くんと付き合ってるの?」
「え?」
「え?って…隠したって無駄よ。名前っていつも匂宮と帰ってるし、放課後とかよく一緒に歩いてるの、みんな知ってんのよ」
「あぁ…実はね、出夢とは幼なじみなの。何年か振りに会ったから、昔話とかしてて…家も近いからさ、並盛町をいろいろ案内してるのよ」
「そうなんだぁ」
「…ふぅん」
「絶対そうだと思ったんだけどなぁ」


残念そうに呟く京子の隣で疑わしげに見つめてくる花に苦笑いで返すと、まあいいけど、なんて言葉が返ってきて、少し罪悪感が生まれる。
けれど私は、出夢のことをそういう意味で好きなわけではないと、思う。彼を好きになれたのなら、とても、素敵なことだとは思うけれど。
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