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機械音が金工室に響く。それだけならば普通のことだ。普通の授業を行っているのだろうと、誰でも思う。しかしその音が聞こえるのは残念なことに、夜中だった。草木も眠る丑三つ時。そして今はまさに、その時刻。
「お、おいリボーン…どうせデマだろ、こんな七不思議なんて調べてどうすんだよー…」
金工室へと歩を進める少年達のうちの一人である沢田綱吉は、体が拒否反応を起こしているためかどこか覚束ないあしどりである。
何故ここで肝試しなんかをしているのか。その理由は遡ること約6時間。いつものように、皆で終わらない課題をやっつけていたときのことだ。
「そういえば知ってるか?」
そう口火を切ったのは山本だった。相変わらずの爽やかな笑みを浮かべながらの一言だった。
「何を?」
プリントに釘付けになっていた視線を山本へと向けた。
「並盛中の七不思議」
「え…知らない…。獄寺君、知ってる?」
「いえ、俺も初めて聞きました」
「実はな…」
にかりと笑みを浮かべて話し出したその内容こそが金工室の謎だったのだが、幸か不幸か、それを聞いていたリボーンの興味を引いてしまったためにわざわざこんな深夜に学校まで足を運ぶことになってしまったのだった。
「……む…で…」
そんなこんなで辿り着いたここ、金工室からは本当に機械音が聞こえていた。そしてそれに雑じる人の声。金工室の扉に耳をくっつけて、その声を聞き取ろうとするが、しかしよく聞こえない。
「開けてみろよ、ダメツナ」
「なんでオレ!?」
「ごちゃごちゃ言うな」
蹴り飛ばされたため、がいー…んと金工室の鉄の扉に思いきり体をぶつけてしまった。その瞬間に止んだ機械音に、ええい侭よ…!と扉を思い切り開くと、
「い…いない」
窓はきっちりと閉まっていた。