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22:28


少しでいいから手合わせして欲しい。出夢にこの言葉を投げ掛けたのは失敗だったかもしれない。1時間だけという約束で様々な武器を駆使し出夢とやり合っていたのだが、開始20分でギブアップしてしまった。少しこれは、やばいかもしれない。
「おんぶ」
「あ?立てねーんですかー?」
出夢は消化不良で苛立っている。
「しょうがないでちゅねー」
苛立ちついでにバカにされている。だがこれは不可抗力というものである。足に、出夢の蹴りが決まってしまったのだ。むしろ痛むだけで済んでいるのが奇跡だ。いや、大腿骨にひびは入っているかもしれない。立つのがつらいため、おんぶではなくオヒメサマダッコになってしまった。微妙な気分である。あとやっぱり痛い。
「……出夢、」
私を抱き上げている出夢が、急に走りだした。どうしたのと声をかける前に、風とともに肌を燻る殺気を感じて押し黙る。訊かなくたってわかることだ。「はじまるんだね」小さく呟いた言葉は、出夢には聞こえなかったようだった。
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