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黒いコートを来た少女が私の対戦相手というやつらしい。コートの下に隠れているが、銃とナイフをたくさん所持しているようだ。
「ふん。私の相手、あんたなの?ブッサイクゥ」
「身体的特徴で人を貶めるのは感心しないわ」
「……事実は事実として受け止めるべきじゃない?ブサイクちゃん」
「私は罪口名前」
「ブサイクちゃんで十分」
「イラッときた」
「おいおい」
後ろで呆れたような声を出した出夢はこの際無視しよう。
「まぁまぁ頭は良さそうだけど、所詮は一般人でしょ?しかもブス。私に勝てるわけないじゃない」
「……私を誰だと思っているの?罪口名前は今のところ全戦引き分け負け無しよ」
「それ勝ってないじゃない。ブスなうえに頭も弱いの?かわいそー」
「ブスブスって、それしか言えないの?あなた、人に言える顔してないのによくもそんなにあれこれ言えるね。あなたの言葉を借りるなら、"ブッサイクゥ"」
「……私が、ブサイクですって?」
「……気づいてないの?」
首を傾げて心底不思議そうに言った私に相手はとても怒っているらしい。ふざけた雰囲気から一変、まるでそれだけで人を殺せそうな針を身に纏っているかのような、ピリピリとした……ああ、これは、殺気か。
「把握したわ」
「は?」
「銃が4丁。ナイフが26本うち25本は投げナイフ。中距離型なのね」
「……」
「でもナイフ、ちょっと少ないんじゃない?銃は2丁あれば十分すぎると思うし、ナイフはもういっそのこと針に変えちゃって、先端に毒を仕込んでおくとか……あぁ、でもそれはだめね」
「は、はぁ?何語り始めちゃってんの?キモ」
「あなたとキャラが被るのは、嬉しくないわ」
「はぁ?…っ!?」
ばっと少女は下を向いて、驚いたように足に刺さっていた針を引き抜いた。針からは血がぽた、と滴った。
「今気づいたの?よかった、成功みたい。一本一本丁寧に磨きぬいた私の針は、鋭利すぎて、刺さったことに気づかなかったでしょう?毒物は流石に手に入らなかったんだけど、あれば完璧だったわ。今の一瞬で息の根止められたもの。まあでも、心臓狙えば一発よね。トラップか暗殺向きに改造するならもう少し小さい方がいいのかも。どう?痛い?」
「は、何よ、ただの針じゃない!このぐらいじゃ痛くも痒くもないわ!馬鹿にしやがって!」
だんっと地団駄を踏んだ瞬間、ぐさりと刺さった硝子製の針に目を見開く少女は、満足気に成功ねと呟いた私を酷く睨み付けた。
「ヴァリアーよ、私は。甘く見んじゃないわよ……ガキのくせして、さ!!!!」
片腕でナイフを、もう片方の腕で銃を撃つ彼女の肩は、私が思っていたより大分丈夫なようだ。素晴らしい。私はにっこりと笑んで、
「でもダメ。羽虫みたい」
私は心臓以外の五臓六腑と気管へ針を投げ刺し、血を吐き出した彼女の首から悠々と指輪を取り、勝利をおさめた。
「早く治療しないと死んじゃうわ」
チェルベッロとやらにそう言えば、彼女たちは慌てて救護をし始めた。死なないといい。熱のこもらない目でその様子を見ていれば、出夢の笑い声が、やけに鮮明に聞こえた気がした。
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