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one's turn


暴行は日々続いている。きゅっと噛みしめた唇からじわりと滲んだ鉄の味が一瞬で消えるのはもういつものことで、後すら残らない。体のどこにも不調なんてない。
「最後に1つだけ確認するよ、名前ちゃん」
「ええどうぞ、いっちゃん」
「どんな結末でもいいんだね、名前ちゃん」
「もちろんよ、いっちゃん」
今は既に灰になったであろう、いつかの書類に書いてあった頃宵月匕の個人情報。さしたる問題ではない。正直なところ、彼女がなんだって構わないのだ。なぜって彼女は、捕食する者ではない。捕食される者である。つまり彼女は主人公にはなれないのであって、おそらく未来のない人間。私と彼女の運命が覆った瞬間はずっと前。私が初めて日本に来たとき。彼女は間に合わなかったのだ。本来ならば私が不老不死になる前に私と接触し、私を殺すべきだった。それができなかった彼女に、未来なんてそんな綺麗なもの、あるわけない。
「出番だよ。」


未来なんてそんな綺麗なもの、あるわけない。
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