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She is smilly .



ぎしぎしと木が軋むような音で目が覚めた。話し声もする。目を開けて体を起こせば、体が軋んだ。暗い部屋の中、携帯の光が規則的に室内を照らす。目を細めつつ手を延ばすと、握っていた小ビンが畳の上をころころと転がっていった。こつん、と部屋の壁に当たり止まったそれを拾い上げて、携帯を開いた。着信1件。とんとんとノックの音が響いた。

「どちら様ですか?」
「…僕だけど」
「はいはーい!今開けますね!」

勢いよく開けると、扉がみしりと悲鳴をあげた。いっちゃんは一瞬だけ扉に視線をやって、そして聞かなかったことにしたらしい。私に視線を向けて、口を開きかけたところで私は遮るように声を発した。

「おかえりなさいませ御主人様。ご飯にしますか?お風呂にしますか?それともわ・た・し?」
「…………………………。うん。ナマエちゃん、僕はやっぱり帰るよ。邪魔したね」
「やっだぁ!ジョークですよジョーク!冗談冗談!あは!」
「まったく…どこでそんな言葉を…」
「どこって…決まってるじゃないですか!」
「…正直ナマエちゃんの交友関係って広すぎると思うんだ」
「春日井さんが教えてくれました」
「…ナマエちゃんってたまに真顔になるけどそっちが素?」
「あっところで何か用でしたかー?」
「…あ、忘れてた。電話したんだけど出なかったから訪ねたんだよ。…ナマエちゃんって、初対面のメイドさんを家に泊められる?」
「メイドさん?えっとー、いっちゃんが今どんな状況に陥っているのかを1から100まで教えてくれたらかまいませんよ!」
「それは、」
「私って0か1かで構成されてるんですよねぇ!あは!」
「…個人的に、0は嫌だな」
「成立ですね!じゃあその方を連れてきちゃってくださーい!」

にこにこと笑みを浮かべながらさぁさぁといっちゃんの部屋の方向へ押しやるとすぐさま部屋の扉を閉めて、散らばる紙を拾い始めた。
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テーマ「人外ファンタジー」
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