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graceful


「きゃっ!」
下駄箱を開けた瞬間にわざとらしくも可愛らしい声をあげて、彼女はぱっと後ずさった。
「だ、だれがこんなこと…!」
「そんなのあいつに決まってます十代目!」
「獄寺くん…?あいつって…」
「おっはよー!やあやあ、皆集まっちゃって、どうかしましたかーっ!」
ぽんっと獄寺の背中を軽く叩いて、獄寺で影になって見えなかった下駄箱を覗き込む。と、ぽたぽたと水を滴らせたティッシュがごちゃっと突っ込まれていた。
「なっ、!」
「うっわぁ!びっちゃびちゃ…びっみょーに悪質だねこりゃ!ね、高海ちゃん、深空ちゃん」
「朝からうるさい」
「朝からうるさい」
「手厳しい!」
「パターンだな」
「パターンだな」
「し、白々しいぞテメェ…!」
「え?何が?とりあえず月匕ちゃんは職員室でスリッパ借りてきたらいいんじゃない?」
「えっ…あっ、うん。獄寺くん、綱吉くん、一緒に行こう」
戸惑いをみせる視線と鋭い視線に突き刺されながら、3人がぱたぱたと職員室へ走って行くのを見届けて、私は濡れている下駄箱を覗き込んだ。中に入っているうわぐつはご丁寧にもビニールがかぶせてあって、靴の表面は全く濡れていなかった。
「どう思う?」
「そんなのは」
「聞くまでもない」
「自作自演」
「自作自演」
「それか親切ないじめっこさん?まったく…私の下駄箱なんかもう潔いよね!」
ちらりと視線を移した先には、へどろと空き缶やガラスなどがべっちょりと入っていてどぶ臭い下駄箱があった。
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