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怒りや憎しみといった所謂負の感情というものは一時の感情でしかない。悲しみもまた同一のものであると私は思う。人が一人死ぬとき、他人に与えられる感情は意外に小さく、たった一瞬で消え失せる。でもそれは時と場合にもよるのだ。永久に残り語り継がれる悲しみも、ある。
「…名前ちゃ、ん、」
「名前…六道くんが…」
「外傷はないのね」
「とりあえず俺の部屋に行こう」
「私は行けない。ルームメイトを一人にはできないから」
「…わかった。何かあれば後で呼びに行く」
「私が、あのとき作ったものを合言葉にしよう」
「あのとき?」
「部屋で」
「あぁ、あれだな」
「それじゃあまた後で」
泣き崩れる少女に視線だけを向けて自室へと向かった。一度も朝音と視線が合わなかったことを不思議には思ったけれど、大して気にはしなかった。人生においての小さな間違いは、事が悪い方へ大きく傾いてからようやく気づくものであるのだから、このときの私はまったく気づくことどころか気づく気配すらもなく、何も考えずのうのうと廊下を歩いていた。
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