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木の下


「何してるの?」
がやがやと練習している雷門イレブンを横目に、私は一人木陰でパソコンを開いていた。目金くんがきらりと輝いた眼鏡を押し上げている。
「ははーん。さては成る程、僕のマネ…と言うわけですね」
「それはない」
「なにもそんなはっきり言わなくても…」
ずーんと沈んだ目金くんに苦笑いで答えてから、ディスプレイを見せた。
「これは…?」
「帝国学園、戦国伊賀島中、千羽山中との試合の動画。私マネージャーやってるけど、皆の試合してるところ見たことないから…。ちょっとでも、と思って。あ、ドリンクなら部室で氷水に浸してあるんだけど、必要?」
「あ、ううん。何してるのかなって思っただけなの。それにドリンクもまだ足りてるみたいだから大丈夫よ」
「そっか。ならよかった」
あ、じゃあ私は行くね、と言ってベンチのある方へ歩いて行った秋ちゃんを見送って、この場に残った目金くんに視線を向けた。
「どうかした?」
「そのパソコン、貸していただいてもかまいませんか?」
「もしかして、疑ってる?」
「い、いえ、そういうわけでは…」
「いいよ。私が怪しいのはよくわかってるから。皆全く疑わないんだもん。逆に驚いちゃった。…はい。好きに見ていいよ」
「対策は、完璧というわけですね」
「…目金くん、意外と度胸あるね。それから、ちょっと無謀?かも。もしも私が本当に敵だったとしたら、私と二人きりっていうのは危ないと思うよ」
「それは、そうですけど…」
「もしあれだったら、USBに全部データ移す?あっ…でもギガで足りないか…」
「は?」
「ううん。なんでもない。はい、どうぞ」
「それじゃあお借りしますよ」
きらりと輝く眼鏡を押し上げて、パソコンを脇に抱える姿は様になっていた。決してサッカー部には見えない。手持ち無沙汰になった私は立ち上がり、皆を応援しようとグラウンドへ歩いて行った。
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