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にわか雨


ざあざあと強い雨に急に降られて、皆慌てて部室へ駆け込んで行った。ドリンクの準備をしているはずの秋ちゃんと春奈ちゃんは慌てて真っ白なタオルを出して配っているのだろう。夏未ちゃんは生徒会の何かでさっき抜けてしまったため、グラウンド担当のマネージャーは今に限っては私一人だった。ベンチに置いていた救急箱やファイルなどが濡れないように抱えて部室に駆け込むと、すぐに秋ちゃんがタオルを差し出してくれたので、風邪はひかずに済みそうだとほっと息をついた。
「せ、先輩!すぐに着替えてください!」
「え、なんで?」
はっとしたように顔を逸らした部員達の顔はほのかに赤い。春奈ちゃんはそんな部員をきっ、と力強く睨んだ。
「先輩はなんで、ジャージ、持ってきてないん、ですかっ!」
「わっぷ、春奈ちゃ、力、つ、つよ…!いたたた…!」
タオルで私の顔をぐいぐい拭う。私、今きっと悲惨な顔してる。
「これがお嬢様なんだよなぁ」
ちょっと半田くん、わかってるから、わざわざ言うな。
「マネージャー、そろそろやめたほうが…」
ひきつった笑みで言った栗松くんにはっとして動きが止まった春奈ちゃんは慌てて口を開いた。
「ご、ごめんなさい!あ、タオルと、これ私のくしなんですけど、抵抗なければ使ってください」
どうぞと差し出されたタオルとくしを受けとって悪いねと返せば、横から風丸が赤い顔を逸らしながら綺麗に畳まれたジャージを差し出した。
「貸すから、着てくれないか。その…ほら、……風邪ひくだろ」
「あ、…あぁうん。じゃあ借りようかな。ありがとうあはは」
風丸が絶対に私の方を見ないことでやっと気づいた。濡れて張り付いたワイシャツのせいで体のラインが浮き出ているのだ。見られて困るような体つきはしていないが、だからといって堂々としていられるような精神はしていない。ちょっとだけ普通じゃない生活をしていたけれど、私だって女の子なのだ。ちょっとだけ熱を持った頬を隠すように幾分か大きいジャージのジッパーを一番上まで引き上げた。あ、失敗だったかも。自分の物でない匂いが鼻をつつき、余計に頬に熱が集まった気がした。




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ラブコメのターン!
最近は王道が好き(^^)

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テーマ「人外ファンタジー」
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