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放課後


雷門への転入は中途半端な時期だったこともあり、手続きに手こずったりや制服の到着が遅れてしまったせいで、転入することが決まってからちょうど一週間後の今日、やっと、雷門中へ足を踏み入れることができた。「あ!いたいた!」にこにことして駆け寄ってきた見覚えのあるオレンジ色のヘアバンドをした少年と、その隣の水色のポニーテールの少年が私の目の前で立ち止まった。
「あ…久しぶり。こんにちは。」
「あぁ!久しぶり!名前言ってなかったよな!俺、円堂守。こっちは風丸一郎太。」
「よろしくな、えっと…。」
「苗字名前。名前で呼んでね、よろしく。」
「わかった!…あれ、もう帰るのか?」
「ううん、今からサッカー部の部室に行くところだったの。」
「じゃあ一緒に行こうぜ!」
「円堂くん、何やってるの?」
「あ!木野、こっちは名前。転校生で、サッカー部に入ってくれるんだ!」
「ほんと!?私は木野秋、サッカー部のマネージャーやってるの。これからよろしくね!」
「私は苗字名前。よろしく。」
「えっと…名前ちゃんはマネージャーだよね?」
「うん。」
「」
「あぁ、わかった!行こうぜ風丸!」
「あぁ!また後でな」
ばたばたと慌ただしく廊下を駆けていく二人を見送って振り返ると、目を可愛らしくきらきらさせたショートカットの眼鏡を頭に乗せた女の子がいた。メモとシャーペンを持って、「1年の音無春菜です!質問したいことがあるんですが、今からお時間ありますか!?」訂正しよう、目を獲物を見つけた獣のようにぎらつかせた女の子が立っていた。







「あの、えっと、春奈ちゃん?」
「はい!」
「マネージャーのお仕事、しなくていいの?」
「大丈夫です、マネージャー同士、これからのためにお互いを知るのも仕事のうちです!」
「そうなの?」
サッカー部の部室で、古びたパイプイスに座り首を傾げれば、そうです!と元気よく答えが返ってくる。ふーんと適当に頷いて、姿勢を正した春奈ちゃんにつられるようにして背筋を伸ばした。
「はい、じゃあ写真いただきますね!」
「うん、……うん?」
「実は新聞部にちょっと頼まれてまして、…ダメですか?」
「んー、いや、いいよ。大丈夫。」

「よかったー。」
春奈ちゃんが叫びながら思いきり身を乗り出すと、その拍子に片足が椅子に引っ掛かり、目の前にいた私の胸に倒れこんできた。踏み止まろうとして、しかし一瞬で春奈ちゃんの足への負担の比較が脳内でなされる。「っ」ぐらりと傾いた視界が思ったよりも気持ちのい



「…」
春奈ちゃんはメモ帳と私を交互に見て、それからメモ帳をぱたんと閉じワイシャツの胸ポケットに仕舞うと、にこり。たいへん可愛らしい笑みを浮かべた。雑巾濡らして来ますね、と言ってぱたぱたと走って行く姿を、また転ぶんじゃないだろうかとヒヤヒヤしながら見送って、私は私でやるべきことをせねばとロッカーからほうきを取り出し、きょろきょろと部室の状態を確認する。使われていない棚やロッカーの裏は、とんでもないことになっていた。「(これは本気で頑張らないと…)」1つ咳ばらいをして、窓を全開にした。
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