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雷雷軒にて


「よお、響。ラーメン2つ頼むぜ」

どかりと座った真っ赤な女性とその隣に静かに座った白いワンピース型の珍しい制服を着た少女を一瞥して、大人しく麺を茹ではじめる。響の話し掛けるなと言わんばかりのその姿に違和感を感じてその3人に視線を向けていた風丸と円堂は、急に振り向いた赤い女性と目が合って、どきりとした。美人だが、目つきが悪いのがもったいない。どん、とラーメンが少女と女性の前に置かれ、少女はやはり静かにラーメンをすすり、女性は風丸と円堂から目を離さずにラーメンをすすり始める。「こ、こんにちは。」無理矢理笑顔を浮かべて挨拶すると、すぐに2人は女性から目をそらした。

「あん?なんか用なんじゃねぇのかよ」
「哀川さん、美人なのに目つき悪いからじゃないですか」
「あたしを苗字で呼ぶなって言ってんだろ」
「いたたたっ!ちょっ暴力じゃ屈しませんよ哀…潤さんちょーかっくいー!」
「ったく。いーたんのところに預けてたのは間違いだったか。口ばっか達者になりやがって。おい、そこの雷門サッカー部!」
「は、はい!…あれ?あの、俺達のこと知ってるんですか?」
「知ってるも何も、こないだ40年くらい無敗の帝国に勝ってただろうが…おっと、忘れるとこだった。優勝おめでとさん。全国がんばれよー」
「はい!ありがとうございます!」
「いいねぇこういうの大好きだ。よし!名前、雷門入れ。そんでサッカー部入れ」
「なんでですか!」
「響、こいつこき使っていいから、ここに住まわしてやって」
「おい、潤…」
「あぁ飯とかは大丈夫。こいつこう見えて金持ちだから勝手に食うだろうし。寝るとこさえあれば生きられるから」
「あの、これから福岡に、」
「それがさ、実はこれから北海道行かにゃならなくてよ」
「嘘、ですよね」
「あっはっはっ!本当なんだなぁこれが。そんで北海道のどっかに転入させるつもりだったんだけどさ、ここならお前もちゃあんと学校行くだろ」
「えっ?学校?まっさかぁ冗談、」
「じゃねぇって。そこの二人、こいつと仲良くしてやってくれよな。悪いやつじゃあないからさ。そんじゃ、響」
「…なんだ?」
「ん。釣りはいらねぇからさ」

万札を台の上にぽんと置いてひらひらと手を振りあっという間に雷雷軒から姿を消した赤い女性が置いて行った少女は諦めたようにラーメンのスープを飲みきり、偶然居合わせ巻き込まれた風丸と円堂に、疲れたように小さくよろしくと言った。
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