long | ナノ


But he doesn't know .



体中に巻かれた包帯が目に痛かった。
ヘマをしてしまったと、自分だって思う。ただ相手が強かったというのもあるけれど、いつもの私なら、殺せたのに。そろそろ、潮時か。やめたくないとは思っているけれど、私は近いうちにこの世界から足を洗うだろう。そうでなければ、きっと死んでしまう。けれど彼らとの一方的な、微かな繋がりさえ断ってしまうというのは、痛い。懐かしい、温かい、楽しい、あの場所。あの人、たち。あぁ、蜂蜜料理が食べたいなぁ。いくつか餞別にと頂いた蜂蜜にはまだ手はつけられなかった。けれどどのみち、ここでは食べれない。

「ナマエお姉ちゃん」
「あ!崩子ちゃんいらっしゃーい!」

物思いにふけっていると、病室の扉が開いた。あの黒髪美少女は、崩子ちゃんだ。すたすたと真っ直ぐにこちらに向かって歩き、脇に立て掛けてあったパイプ椅子を広げて座った。

「いらっしゃいじゃありません。ナマエお姉ちゃんまで入院だなんて何やってるんですか」
「まで?えっと、それって他に例があるから使う言葉だったよね?じゃあ誰か入院してるんだね!?」
「はい。戯言遣いのお兄ちゃんです」
「あぁ、いっちゃんか!まぁ他に入院しそうな人なんていないもんね!」

うんうんと頷いていると、崩子ちゃんは持ってきた紙袋から林檎とナイフをとりだして、皮を剥き始めた。食べさせてくれるのだろうか。

「ナマエお姉ちゃんは何をやったんですか?」
「…うん、なんかね!、夜道をフラフラと歩いてたら急に出てきた壊常っていう人と乱闘して引き分けたんだけど体中刺されちゃったから血が足りなくてばたんきゅー!」
「そうですか」
「…え?信じちゃうの?嘘だよ?」
「壊常という方の性は…闇口ですか?」
「…」
「隠さなくても大丈夫です。お姉ちゃんが危ないことをしているのは、本当は皆知ってます」
「…ありゃ、バレちゃってたのか」
「戯言遣いのお兄ちゃんは知りませんけど」
「…うん。でもいっちゃんは気付いてないと思うな」
「…そうですね」

「あーん!」

林檎を剥き終わったようなので、ちょいちょいと口を指さしてみた。

「……」

痛い沈黙が返ってきた。
あのね、崩子ちゃん。そんな痛いものを見るような目で見られると、流石の私も…傷つく
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -