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ぷらいど、あいとう


「単刀直入に言う。俺達側につかないか?」
腕を組んで偉そうにそう言った人にぽつりと言う。
「どうして」
「お前もわかってるとは思うが、このままやつを放っておくのは危険だ」
「…朝音も、そのために?」
「あ、うん」
「あの、名前ちゃんは朝長が、怖くないの?今日だって、真っ向から…」
「怖い?」
「そう、怖い」
「あんなの怖がる理由がないわ」
首を振ってそう答えると、なんとも言い難い表情で押し黙る。「ただ無謀なだけか…」ため息をついてやれやれと肩を竦めた人に一瞬だけ視線を向けて、それから朝音を見た。困ったように立っている朝音に、「死にたいの」と問う。
「…」
「き、君は、目の前で人が死んで平気なの?」
「…あなたは?」
「俺は…死なれたくない…。誰にも死んでほしくない」
「マルタ、じゃなくて…」
「え?」
「誰だったかな。あのお人よし。…ガンタ、そう、ガンタ。あなたガンタみたいね。懐かしい」
「そ、そうですか…」
「もう返せない借りは、あなたに返してもいいかもね。うん。いいよ」
「名前、ほんとにいいの?」
「放っておいたらあなたたち死にそうだし」
「…なら、いくつかの情報を共有したい。知ってることを話してくれないか」
「そっちが先。文字知りたい」
「この人数相手で下手に出なきゃいけないのは…」
「量より質。あなたたち束になっても私には勝てない」
「…大した自信だな」
「経験、かな」
「…」
「…」
「わ、わたし、『銀』」
「おい、春日…」
「私は『刀』」
「『点』」
「『弓』」
「『変』…」
「……………『智』」
「『枝』」
「え、えだ?」
「そう、えだ」
「…『壁』を破ったあの赤いのが、枝だって?」
「そう、枝」
「…」
「罪の枝。知りたい?」
「…」
「血を操るの」
制服のポケットに入れているカッターを取り出して、慣れた手つきで薄く腕を切り付けると、ぷつぷつと血の玉のようなものが出る。ここまでは、普通の人と変わらない。変わるのは、この先。にょき。小さな血のたんぽぽが腕から生えた。
「なっ」
「…」
「経験」
「え?」
「過去に経験しているものを創造するのはたやすい」
「…文字無しでもできるってことかよ」
「違う。『できた』」
「…」
「ルームメイトが心配するから帰る」
「は?おい、待てよ!」
「あなたの作戦は手伝う。勝算があるのなら本格的に協力してもいい。だけど、ガンタみたいな人と朝音は優先する。できるだけ死なせないようにする。でも他は知らない」
「…名前」
「大した関わりもない人間を無条件に助けるお人よしじゃないってこと」
去り際に呟いた。
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テーマ「人外ファンタジー」
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