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あえない、しねない


息苦しい。喉が悲鳴をあげている。息苦しい。喉を締めつけている。誰が?わからない。ほんとうに?きつくきつく、締めつけている。喉が音を立てている。器官が圧迫されている。骨が軋む。声にならない声が響く。何も見えない。何も聞こえない。何もない。なのに苦しい。暗い。ああ、黒い。暗い。暗い。ああ、黒い。あぁ、死んでしまうね。死んでない。よかった。なにが?なにがよかったの。死ななかったことか。生きてたことか。わからない。わからない。わからないね。いまいち現実味がなくて、けれど醒めれば急速に現実味を帯びる、多分、夢。私は、本当は自分が大好きなのね。だから、自分を殺そうとする。でも、私は死ねない。死んではいけない。矛盾。ほんとうに?

「名前、朝ご飯置いとくよ」
「ありがとう」
「んにゃ、気にすんな」
「うん」
「あんた疲れてんじゃない?今日は蝕も無いんだし、授業休んだら?」
「行く」
「5組は人数少ないから、あんま休めないけどさ。4組は人数多いじゃん?無理することないって」
「行く」
「…」
「ありがとう」
「何が?」
「心配してくれて」
「…おー」

楼は優しい人。照れ屋で、面倒見が凄くいい。とてもあたたかいひと。私が休めば、きっと4組の人はこの部屋に来るでしょう。私は朝音も大切だけれど、楼も大切。おんなじくらい。だから、危険な目に合わせたくなんてない。蝕からだって、できるだけ護ってあげたい。だから私は、まだ死ねない。せめて他人を傷つけることしかできなかった私の罪滅ぼしが終わるまで、…もう少しだけ、生かしておいて、ね。私。
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テーマ「人外ファンタジー」
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