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ぐっない、ゆめみて


彼女はまるで蜃気楼のように掻き消えてしまいそう。そこにいるけれどいない。まるでそんな感じ。瞳はいつも濁ったようにも見えるほどに澄んでいた。人の瞳を、人の存在を、綺麗だと思ったのは生まれて初めてだった。

「わたし、朝音っていうの。あなたは、えっと、」
「…」
「えっと…」
「名前」
「そう、名前ちゃん!あの、もしよかったら、おともだちになってもらえないかな」
「ともだち?」

彼女は長い艶やかな髪をかきあげて、こて、と首を傾げた。今まで綺麗だと思っていた彼女が、どうしてか愛らしく見えてくる。私はなんだか嬉しくなって、「そう、ともだち!」と、少し声を大きくして言った。

「それはかまわないのだけれど」
「よかった!」
「どうして」
「え?」
「私なんかに」
「えーうふふー言えないよー!」
「…そう」

彼女はまるで蜃気楼のように掻き消えてしまいそう。そこにいるけれどいない。まるでそんな感じ。瞳はいつも濁ったようにも見えるほどに澄んでいた。人の瞳を、人の存在を、綺麗だと思ったのは生まれて初めてだった。


そして私はいつもここで、起きる。
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