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ぐっばい、さよなら


さくさくと真っ白く積もった雪を踏み締めながら、ほうっと息を吐いた。マフラーを巻き直すと一瞬で冷えてしまったのか、ひんやりとする。朝音が急に転んだ。笑いながら手を貸すと、ムスッとした顔で立ち上がる。頬は寒さか照れか、赤くなっていた。平和だ。

「わたしね、楢鹿に行くんだぁ」
「ふーん」
「島がさぁ、見えてるから、」
「うん?」
「親がね、行きなさいって」
「うん」
「それで調べてみたんだけどね、」
「うん」
「楢鹿のこと、知ってる?」
「名前だけ」
「わたし、きっと死んじゃうから」
「なんで?」
「そういう学校なの」
「よくわからないけれど、」
「だから、もうすぐずっと会えなくなる。多分、今日が最後」
「行かなければいいのに」
「わたし馬鹿だから、楢鹿以外は難しいの」
「やる前から諦めてるんだ」
「1年頑張れば大出世だから、いいの」
「死ぬかもしれないのに?」
「うん。死んじゃうけど」
「死にたいの?」
「そんなわけないじゃん…」
「私には、よくわからない」
「それでいいよ。わかってほしくない、から」
「そっかぁ、」
「うん、そうなの」
「そっか、」
「わたし、名前のこと、親友だと、思ってる。勝手にごめん」
「ううん。私も、思ってる。勝手にごめん」
「あはっ」
「あはは」
「それじゃあ、ね」
「うん、ばいばい、」

さくさくと真っ白く積もった雪を踏み締めながら、ほうっと息を吐いた。マフラーを巻き直すと一瞬で冷えてしまったのか、ひんやりとする。×××××。懐かしい名前で呼ばれた気がして周囲を見渡したが、雪で遊ぶ子供たちしかいなかった。頬は寒さでか、赤くなっていた。あぁ、平和、だ。
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