◎ワールド・ナイトパレード

 シャワーを浴びたあと、ベッドの上で一人ムッツリとした顔で本を読むギアッチョの隣に腰を下ろす。
 触って、とねだったら、ギアッチョは露骨に顔を顰めたあと溜息をついて、俺の頭をガシガシと掻きまわした。その手付きがあんまりに雑だったから「犬でも撫でてるみたい」と言うと、「大して変わんねえだろ」と鼻で笑った。ひでえ。
「寄るって静かだよなぁ」
「そうだな」
「暇だなー」
「だなー……」
「構ってほしいなぁー」
「あー……」
 次第に返事が適当になるものだから隣の腰に抱きついてみる。が、ギアッチョは読んでいる本から目を離さない。俺もそんなギアッチョに構わずに腕に力を込める。お腹のあたりに鼻を埋めて、思いっきり息を吸って、吐く。微かに残るボディソープの香りが、ギアッチョの温度で温かい。
 ……ああ駄目だ、人肌が足りない。もっと、もっと!と顔を押し付ければ、ぐいぐい増す腹部の圧迫感に苛立ったギアッチョの手が俺の頭を掴んで剥がしにかかった。
 一人用の狭いベッドだ。そんな扱いをされればすぐに追い出されてしまう。床の上に転がって、部屋の天井をぼんやりと眺めた。火照った体に床板を滑る隙間風が気持ちいい。ああ寝そう。
 うとうとしていると、いつの間にか読書を止めたギアッチョが俺を覗き込んでいた。何?と口を開く前に、俺が勝手に持ち込んだ厚手のタオルケットが乱暴に投げつけられる。あ、優しい。でも、そっとベッドに戻してくれるとか、一緒に寝ようって誘ってくれるとか、そういうのは無いんだね。
 すこし冷えてきた体にタオルケットを巻きつけて、目を閉じる。おやすみなさい。
 馬鹿じゃねえの、とギアッチョの声が聞こえた。

(で、風邪を引きましたとさ)
(ギアッチョの部屋ドライヤーないんだよなー。ありえねー)

20140414upの拍手


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