※生存花京院+パパ太郎+スタープラチナ


 お昼ご飯の後の、うららかな日差しが温かい時間。
 大きなガラス戸から外光の差し込む承太郎の部屋はまさにお昼寝には持って来いで、僕との怪獣ごっこで遊び疲れた徐倫ちゃんが、主不在のベッドの上で、タオルケットをお腹にすやすやと眠っている。
 さらさらと、徐倫ちゃんの子供らしい柔らかな髪を梳く大きな手。それは青色という、人間離れした不思議な色をしていた。
 徐倫ちゃんを起こさないようにとずっと黙っていた僕だったが、とうとう口を開かずにはいられなかった。
「承太郎」
「なんだ花京院」
「逆でいいんじゃないかな」
 デスクに向かっていた承太郎は、徐倫ちゃんの傍に座る僕と、同じく徐倫ちゃんの傍に立ち、優しく徐倫ちゃんの髪を撫で続ける『スタープラチナ』を振り返り、なんだ、と目線で問いかけてきた。
「仕事を放っておくことは出来ないが、それでも娘を構いたい。そんな君の気持ちは察しよう」
「?ああ……」
「けど、そんなに世話をしたいのならさ、逆でもいいんじゃないかって思うんだ。君と、スタープラチナとがさ」
 承太郎は何食わぬ顔をしているが、こうしている間にも、スタープラチナは捲れてしまったタオルケットを甲斐甲斐しい手付きで整えている。
 スタンドを手作業と平行して動かすなんて器用な真似をするほどに自分の娘が気になるのなら、いっそ承太郎自身がこちらに来て、書きかけの論文はスタープラチナに書かせてしまえばいいんじゃないかと、僕は言いたかったのだ。承太郎だって、徐倫ちゃんには自分の手で触れたいと思っているだろうし。
 僕の提案に、承太郎は少し気まずそうに視線を逸らして頭を掻いた。
「……最初は俺もそうしていたんだが……やはりどうしても本体の方に意識が集中しちまうみたいでな。気が付いたら、スタープラチナが原稿用紙に徐倫の絵を描き始めていたんだ。実に精密な奴を……ちなみにそこの壁に貼ってある奴だ」
「貼っちゃうんだ」
 承太郎は、思ったよりも重症レベルの親バカだ。

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