ソファに座り、雑誌「男の旅路〜今から始める男趣味100選〜」を読んでいたギアッチョは、ページが「これが新しい男の生き様!魂賭けるバトルポーカー!!」のあたりにさしかかった所で、
「おいギアッチョ、何読んでるんだ?」
 ずしりと肩に掛かる重みに、ギアッチョはウンザリ顔をした。
「……んだよイルーゾォ、びっくりするじゃねーか。あと重ぇ」
 振り返らずともわかる。声と、あとは何より視界の両端に見える長い黒髪の束の持ち主はイルーゾォしか居ない。ふらふら揺れるそれを思わず引っこ抜いてやりたくなったが、今見ているページが気になるので手が離せず、鬱陶しそうなギアッチョにイルーゾォはシシシと笑う。
「まあまあそんなイライラするなって。つーか、なんだその雑誌。内容メチャクチャじゃね?何をどうすりゃポーカーで死ぬんだって感じだし、そっちの一発芸とか絶対ムリだろ。煙草十本とか難度高過ぎ」
「ケチつけんなら見んなよ」
「え、何。もしかしてそれお前の?意外だなあ。ホルマジオあたりが買ったのかと思ってたけど」
「俺のじゃねーし誰のか知らねー。重いからどっか行けっつってんだよ。頭に顎乗せんな!」
 やいのやいの騒ぐ二人の背後に、忍び寄る影が一人。
「とうっ」
「うわっ」
「ぐおぉっ」
 突然の背後からの衝撃に驚くイルーゾォと、さらなる重みに苦悶の声を上げるギアッチョ。二人の上に重なるようにして覆いかぶさったのは、妙にハイテンションなメローネである。
「やあやあ皆さんっ!健康状態はァ、良好ですかァァァッ!?」
「うるせーッ!つーかテメー、何でそんなテンション高いんだよ!」
「なんか二人が楽しそうかつ可愛かったからだよっ!俺も便乗しちゃうぜ!!ホラホラホラァッ!!」
 言いながら飛び乗るメローネに、イルーゾォはぐいぐいと押しつぶされていく。
「うわああ重いいい!!倒れるうううう!!!」
「伸し掛かんなイルーゾォッ!力の限り踏ん張れ!背筋使え!ってぐおお痛えええ!!」

 そんなトリオを傍観しつつ、
「うぜぇ」
 ぼそりと呟くプロシュートに、リゾットは書類を処理する手を止めた。
「野郎の顔面トーテムポールとか、理由は無いがなんかうぜぇ」
「……苛々してるなプロシュート」
「糞ヘヴィーな任務帰りだ。あと、しばらくペッシに会えてねぇ」
(そっちが原因だな……)
 やはり二人は一緒にすべきか……。とシフトの変更を検討するリゾットの隣で、プロシュートは明らかにカリカリしている。
「なんかアレよぉ、ダルマ落としみてぇじゃねぇか?ここに特大ハンマーがありゃあ殴り飛ばしてやるのに」
「だるまおとし?なんだそれは」
「ジャッポーネの遊びらしいぜ。積み重ねた人間の頭を下から順にぶっ叩くんだ。飛ばした飛距離で勝敗を競う」
「本物の人間のをか?……わからないがソレ絶対に間違ってると思うぞ」
 そんな命がけのゲームなんぞあってたまるか。リゾットは心の中で溜息を吐いた。


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