box | ナノ


▼ 酔いどれ


 舌で無理やりこじ開けた唇の間に、口に含んでおいた液体を流し込む。
 鼻を抜ける芳醇な香りがイケナイ気分を盛り立てる。楽しくなって、俺はそのままギアッチョの口腔に舌を遊ばせた。
 あれ、俺何でこんなことしてるんだっけ。
 ちょっと考えて、思い出す。
 ああそうそう。仕事の帰り、たまたま良い白ワインが手に入ったんだった。それで一緒に飲もうと思って、俺はギアッチョの部屋に遊びに来た。

 最初、寝ていたところを起こされたギアッチョはとても不機嫌だったけれど、瓶に張られたラベルを見た途端、嬉しそうな顔をして俺を部屋に招いてくれた。
 あんまりワインを飲むイメージが無かったから、正直ギアッチョのその反応は予想外だった。聞けばギアッチョはまったく同じものをリーダーと飲んだことがあるらしく、以来そのワインは大好物なのだそうだ。思わずナルホドねえとうなずいたけど、正直悔しい気持ちもあった。なんでリーダーと二人で飲んじゃうんだよ。俺も呼んでほしかった。美味しいワインに出会って喜ぶギアッチョ、見たかったのに。
 ワイングラスなんてものはギアッチョの部屋には勿論無くて、俺たちは仕方なく不揃いのグラスにそれぞれ注いで飲み始めた。
 ムードの欠片もなくグビリと飲んだギアッチョは、やるじゃねえか、と上機嫌で俺を褒め称える。嬉しいけどなんとなくリーダーに負けた感を引きずっている俺は、あーはいはいと適当に答えるだけだった。
 しばらくそのまま二人で飲んで、何時ごろだっただろう。寝起きだったこともあってかギアッチョが次第にうとうとし始めて、気が付いてみれば、ギアッチョは姿勢もそのままにスヤスヤと眠ってしまっていたのだった。
 可愛い寝顔を無防備にさらしながら、それでもグラスは離さない。そんな姿が可笑しくてクスクス笑う。俺は起こさないように足音を抑えながら、部屋の隅に置かれた冷蔵庫から炭酸水を取り出した。それを残ったワインと混ぜて、スプリッツァーを作る。これも中々に美味しかった。思わずギアッチョに勧めようとしたんだけど、下りたままピクリともしない瞼は、まさにぐっすり夢の中といった感じで。
 その時、俺のイタズラ心が疼いた。
 眠るギアッチョにゆっくりと近寄って、体温ですっかりぬるくなったスプリッツァーを口移しする。
 結構酔っていたんだろう。無性に楽しい気持ちになって、俺は夢中でギアッチョに口付けた。
 息苦しいのか、鼻から抜けるような声がする。
 ああもう可愛いなあ。
 頬を緩めながら、アルコールに潤った粘膜の感触を楽しむ。唇の隙間から零れていく透明な液体を舐めあげたときは死ぬほどゾクゾクした。
 いい加減目が覚めたのか、ギアッチョの腕が俺の肩を押したような気がしたけれど、調子に乗った俺はそのままギアッチョの上にまたがり、飛び出そうとする文句を押し込めるようにさらに深く口づけた。
 バタバタと暴れるギアッチョに上下に揺さぶられ、まるでロデオゲームのようだと思った。何これ超楽しい。そんな俺の気分はまさに、最高にハイってやつで。
 結局殆ど飲めなかったスプリッツァーが、ギアッチョの逞しい首をしっとりと濡らしている。そんな光景になんだかムラムラしてきた所で、俺ははたと顔を離して動きを止めた。
 ギアッチョがやけに大人しい。
「ギアッチョ……?」
 押し倒したソファの上で、ギアッチョが白目を剥いて気絶していた。
 しばらく待ってみる。返事はない。
 ギアッチョの手から落ちた空のグラスが、ごろごろと床を転がっていった。
「……」
 ざああああと、頭から血の気が引いた。
「……リーーーダァァァァア!!!!!!」
 俺はぐったりしたギアッチョを抱えて、一目散にリーダーのもとへと駆け出したのだった。


(どうしよう、俺、ギアッチョ殺しちゃった!)


 仕事中の所を突撃された上にギアッチョが瀕死(酸欠)でびっくりしたけどとりあえずカミソリを生産することは忘れないプロフェッショナルなリーダーでした。20120930up

prev / next

[ back to top ]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -