謳えない鹿3 | ナノ



「よし!それじゃ用具委員会活動を始めるぞ!」

「「はーい!」」


用具小屋がある学園内のとある一角、横一列で並ぶ形で立つのは4つの影。
右から小さな一年生、一年生、一つ飛んで三年生また一つ飛んでな五年生。とその足元にしがみつく一年生。
一年生2人は元気よく返事をするものの、三年生の彼は隣の五年生を気にしているのかチラチラと視線が泳ぐ。
作兵衛の隣にいる五年生。言わずもがな亮だ相も変わらず前髪で顔半分が覆われ、表情と言えるものが分かり難い。その亮が何故用具委員会メンバーと一緒に居るのか?
まぁ、簡単に説明してしまえば強制連行の言葉で済んでしまう。


委員会にまだ所属して居ない亮。

この学園に編入してからそれなりに月日が経って居りながらも、編入生がどこぞの委員会に入った又は所属になった。と言った話しは一向に耳にしない。
この忍術学園には片手では数え切れない位の委員会が存在する。しかし、その大半が下級生や四年生が代理委員長を勤めていたりと、ひっそりと目立たない活動を行っている。
この学園は忍者を目指す場所だ。くの玉の様に行儀見習いで学園に居る件以外ならば、生徒皆は忍者としての技術を学んで行く。だが、忍者の世界は厳しい。学んで行く学業や行儀に追い付かないや、演習中に重傷を負い忍者として生きて行けない生徒等は退学せざる終えなくなる。
上に上がれば上がる程生徒の人数は減り、委員会を纏める上級生が居なくなる。その為上級生が居ない委員会ひっそりと活動するしかない。その為六年生や五年生が勤める委員会は上級生が居ると言う事で何かと有名となる。まぁ、別の意味でも有名となって居るが……。
そんな訳で、上級生が必要とする各委員会は同時に人手不足と言う理由込みがある。勿論それは、六年生が居る委員会でも同様で人手不足だ。

もし、編入生が委員会に入る。や所属先を探している等と噂が回れば即座に編入生争奪戦となる。しかし、それを聞かないし、編入生がもう入ったなんて話しは無い。

その件に関しては不思議に思う所は有るが、今はとりあえず委員会見学と称して用具委員会に招待した。(招待と言っても遣っている事は連行だが)

喜三太としんべヱとは先ほど知り合ったばかりで、作兵衛との関係は編入してから直ぐに仲良くなったみたいだ。だが……



「見ての通り今回は亮が委員会見学に来ている。先輩に迷惑をかけない様にな」

「「はい!」」

再び一年生2人が返事をする。だが用具委員会にはもう一人一年生存在するも、その存在が返事をしようとしない。
居ない訳ではない。居るのだ。亮の足元に。と言うより足にしがみつく形で。
用具委員会委員長の彼、留三郎は頭を掻き、もう一人の一年生下坂部平太と同じ視線に合わせる為にしゃがみこんだ。

「と言う訳だから、平太。亮から離れないと……」

「………」

な?
彼の言葉でやっと離れた平太だが、制服の端っこだけを掴んだままでこれだけは離しては貰えないらしい。まぁ、これ位なら良いだろう。
立ち上がった留三郎、厚い前髪の向こう側の亮と眼があった様な気がした。彼が笑えば亮も釣られて笑みを浮かべる。


「今日の委員会活動は今まで修復作業が出来なかった場所の確認だ。テスト期間であちこち壊れたまま、その場所を把握し明日各自別れて修復に入る」

それにこれ位なら亮も見学出来るだろう?
いきなり自身へと掛けられた留三郎の台詞に、亮はそうですね。と返した。そんな亮の足元では平太がちらりと薄桜色を見上げてきた事に気が付くが、本人は知らぬふりを通していた。


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