謳えない鹿3 | ナノ



授業を終えた学園内。
教室へと向かう途中の渡廊下を歩いて居れば、僅かながらも此方へと響く人の声。
それが学園内の忍たまのものであるのは確かであり、同時に此方まで聞こえて来ると言う事はきっと彼方側は騒がしいと言った音量に違いない。

歩いていたのは亮だった。手には補習授業を受けていた際に使用していた道具一式。
そして何枚もの用紙である。
何故、補習授業を受けていた亮が、一年は組の教室から離れた渡廊下を歩いていたのか?それは今から数分前へと話は遡る。

以前受けたテストにて、あまりにひどい点数を叩き出してしまった亮は補習授業を受ける事となる。本来であればここまで酷い点数を出していれば、退学と成らざる終えないと言う話では有ったが以前いた学園での単位が引き継がれた為退学は無事に免れた。

しかし、これからの学園生活を思えば、このままの点数を取るやもしれないと抱いた先生は、基礎となる土台を亮に学ばせる事を決める。
それが、一年は組の教師、土井半助の授業だ。
何度も何度も教えている筈の彼の授業だが、何故だが彼が受け持つ生徒達はそれらを一考に脳裏へと焼き付ける事は無い。

しかし、逸れを繰り返す内に彼自身の教えて方としてのスキルが勝手に上がって行くらしく、彼の教え方は学園で一番の分かりやすい授業と成っていた。

さて、そんな分かりやすいやり方での補習授業中に、一人の訪問者が表れた。

2年い組池田三郎次。


彼の登場により、今日の補習授業は終わりを告げた。

何でも、火薬庫内にて整頓作業をして居る時に四年生の先輩が何処に何の粉を置いたかを忘れてしまったらしい。
五年生の火薬委員長代理でも、上手く判別出来ないとの事だったと言う。
そう成れば、言わずもがな顧問責任者である彼の存在へと縋るしかない。

故に補習授業は其処で終了。
すまない、摩利支天と困った顔で謝る土井先生に亮は、逆に復習を行う余裕が出来ましたので大丈夫ですよ。
と、言い残し教室を後にした。

さて、短いながらも補習授業を終えた所で、言葉通りに自室へと戻り今回習った所を復習でもするか。
そう思い、角を曲がった時である。

今方、自身が来たばかりの廊下側から、なにやらバタバタと賑やかな足音がこだまするのがわかる。
尻尾のようにゆらゆらと揺れる長い髪を揺らし、部屋へと戻ろうとする亮。騒がしいその足音は真っ直ぐと此方へと向かって居りまるで、亮を目指すかの様にその騒がしいさは止みはしない。

一体、何なんだ?

歩んでいた亮の足が緩やかに止まり、静かに振り向いた。
確か、今の時間帯は委員会活動をしている筈。
忘れ物でもしたのだろうか?
そう抱いた時である。足元へと走った衝撃により亮のバランスが僅かに揺らぐ。
ぶつかったのか?視線を下げぶつかった対象へ向けようとした途端である。また新たな衝撃を受けてしまった亮は、予想外が衝撃により小さな声を上げて後ろへと倒れてしまった。


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