謳えない鹿3 | ナノ



二言で承諾した亮は三木ヱ門からやり方を教わる。その最中、ある問題が起きた。

「この列の数字を足して行き算盤で全ての数字を計算します」

『はい』

「算盤の使い方は分かりますよね?」

『いいえ』



分かりませ。
と、ふわりと笑う。
此には流石にあの鬼の会計委員長は固まるしか無い。
そもそも算盤とは一年生に習う必須科目の一つである。1から数字を覚えて行く際に、算盤の使い方を教わる。テストの中でも算盤を使わなければ成らない時だってあるのだ。これは忍術学園だけでは無いだろう。他の忍術学校でも覚える当たり前な事の一つ。
それを亮は知らないと言った。

まさか、元三年生で有りながら今迄使った事が無いのか?

先ほど亮との会話の中に亮が通っていた学園の話しをした。其処で座学やら実技の話しはしたものの、深く迄は聞いては居ない。分かった事は実技を主にした演習が多い事。
まさか算盤の使い方迄聞くわけ無い。

其処で三木ヱ門が算盤の使い方を教えるも、一度に全てを覚える訳が無い。加算、減算、乗算等の扱い方が上手く覚えれないみたいだ。
そして何より亮が珠に触れる度に、何処かおどおどした様子に文次郎は頭を抱えた。
自身から手伝えと言って起きながらこれは……マズい。手伝う所か此では足手まといとなってしまう。しかし、だからと言って今更帰って良いとも言い辛し………


『此方の帳簿はどう言ったものですか?』

「今まで卒業して行った先輩方の帳簿です。
此処の数字が予算学で、此方が使用学です」

『では、此方の数字は?』

「過去の予算学と今の予算学の誤差の数字です。毎年、同じ時期に同じ学しか予算を出せない筈なのに何故か合わなく成るんです」


その大半が団蔵の解読不能な時による誤差であり、帳簿を付け終えて尚団蔵が手を付けた帳簿を再確認しなければ成らないと言う二度手間。
少しでも、亮に仕事を遣らせては後輩が付けた帳簿を確認する時間は欲しいとも考えて居たのだが………。
其処でペラペラと帳簿を捲って居ると、ふとその手が止まる。
どうかしましたか?
と、亮が持っている帳簿を覗き込めば、ゲッと顔をしかめた三木ヱ門だが……。



『此方の帳簿でしたら算盤無しで計算出来ます』

「しかし、亮先輩この数字は………」


チラリと文次郎へと向けられた矢羽根。
受け取った彼は中身は?と返してやれば、団蔵が付けた帳簿です。と返ってくる。
本人に悪気は全くないのだが、彼の自は酷く汚い。彼自身も直そうと練習を重ねているのだが、改善される兆しが見えない。
そしてこの文字を読めるのは本人団蔵と、委員長の文次郎の2人のみと成っていた。文次郎も文次郎で委員長でしか計算出来ない帳簿や、上級生のみが読める暗号化が組み込まれている帳簿迄ある。(暗号化を含む帳簿は、どうやら卒業して行った先輩達の遊び心らしい)四年生の三木ヱ門と言えど、流石に手を貸す事は出来ない。


常に猫の手も借りたい状態に、亮が団蔵の文字を読み下す事が出来ると聞けば普通は喜ぶ。
だが、委員長は気を抜きはしない。


「暗算か?」

『暗算と言う訳では有りませんが、此方の帳簿と此方の数字を比較し間違えて居る箇所を見付ければ良いのですよね?』


ぺらりと右に持った過去の帳簿、そして左に持つ団蔵が付けた帳簿。
その2つに文次郎の目つきが一瞬だけ鋭くなるも、ああ。そうだ。と答えた。


「なら、過去の帳簿の書き方を模写しつつ、それの新しい帳簿をつけてくれ」


団蔵が付けた帳簿を捨てる訳にも行かない。
何せ委員会の使用内容が記載されたものだ。下手に外部の人間に渡っては不味い。


「計算された数字を新たに書き込んでくれ」

『分かりました』


頷き一つ。
亮は算盤を邪魔に成らない位置に起き、三木ヱ門から借りた筆で白紙の紙へと筆を入れてゆく。


コレが今までの経由と言う訳である。

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