謳えない鹿3 | ナノ



三木ヱ門、お前はあの編入生と話した事は有るか?

ええ、挨拶や世間話と言ったものですが

どんな思う?

亮先輩ですか?

ああ。

おっとりした感じだと、あと……

あと?

五年生にしては何だか緩いと。

………。

潮江先輩?

……。いや、何でもない。




















アレは一体なんだったのだろうか?

一年と三年の後輩達がまだ来ない時間帯、委員会が始まる前に投げかけられた質問。
潮江先輩からの問いの内容、それは亮先輩の事だった。

薄桜色を靡かせる彼の第一印象、それは緩やかなな塊そのものだった。
年齢とは不釣り合いな物腰に口調。後輩にもさん付けで敬語を崩さない姿は、自身からすれば珍しくて仕方なかった。

今まであんな人は見た事無く、時折遠目から見かけてる先輩は何やら戸惑う仕草が多い。
其の度に近くに居た忍たまが説明する姿を見ていた事もあった。

不思議な先輩、亮先輩。ちょっと抜けて居てふわふわした雰囲気の人、それでも彼の実力はお墨付き。飛び級なんて、早々にあるもんじゃない。
その亮先輩に何かを抱く潮江先輩。
不信だろうか…………何処か納得の行かない潮江先輩。警戒して居るのかも知れない。
何故亮先輩に?と疑問に思う。
潮江先輩は忍術学園一忍者をしていると言われる位の実力、委員会の仕事だけではなく座学及び実技でも高い評価を持つ先輩に私は憧れを抱く。
そして、同時に亮先輩にも抱く憧れ。三年生から五年生への飛び級、後輩にも優しくクラスメート思い。


「(潮江先輩は何を考えて居るんだろう)」



チラリと隣座る亮先輩を盗み見た。
先輩は過去と今の帳簿に目を通しながら、黙々と数字を計算そして筆を走らせる。と言う作業を行って居た。



何故、夜食を届けに来た亮が会計委員会の仕事をして居るのか?
それは亮と潮江文次郎の問い答えのやり取りから始まった。
何やら気に掛かる編入生に対して、文次郎は亮に様々な質問をする。前の学園での生活、先生、先輩、授業内容、1日の流れ。
下級生からすれば文次郎の問い掛けは世間話の様に見えた。しかし、四年生である田村には全く違うのだと理解する。

尋問する際、相手から情報を聞くやり方と言うものが存在する。これは四年生から学ぶ授業で有り、如何にして相手から自身が欲する情報を聞き出せるかが鍵となる。
その流れや話し方の癖が文次郎の問い掛けに、含まれて居るのに気が付いた。

それに亮は気が付く素振りは見せず、短くだが適切にスラスラと答えてゆく。


あまり良い気分はしない。

そんな三木ヱ門をよそに文次郎の質問は終了、暫し間を空けたと思えばいきなりの休憩終了の大声。びくりと肩を揺らした後輩達が渋々に作業を始める。
其処で片付けをして居る亮の姿を捉えた文次郎。丁度良いと、彼は亮に声をかけた。
「この後、予定が無いのならば少し手伝って欲しい」と。それに亮は二言で承諾、そして今三木ヱ門の隣で会計委員会の手伝いを行って居る。

と言う訳だ。

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