謳えない鹿3 | ナノ



「補習なら仕方ないな」

以前行われた試験。
きっとあれで悪い点数を叩き出してしまったのだろう。学園に居続ける為には必要不可欠な単位。失う訳には行かないに違いない。亮が編入してからそれなりに月日は経って居るものの、学んでいた授業内容にも違い位出るのは当たり前だ。それを補う為でもあり、在学し続ける為には先生から出された補習を無視する事は出来やしない。
そう、仕方ない。だがな……

続ける言葉にふと視線を上げれば、また笑う彼がアチコチに印を付けた地図を丸めながら言葉を紡いだ。

「気が向いたらいつまでも来い」

俺らはいつまでも歓迎するからな。
ふと感じた影にピクリと閉ざされた向こう側の眉が動く。しかし、それに気が付かない影は薄桜色の頭上に止まるや否、静かに落下。ポンと抜けた音を立てて間を開ける事無く、ぐしゃぐしゃとその流れを乱した。
まさか頭を撫でられるとは思わなかった亮は、え!わっわ!と押し付けるその手付きに変な悲鳴を上げてしまう。
そして一通り撫で終えれば、ぐしゃぐしゃになってしまった髪の毛に手を当てぽかんとする。想定外だと言わんばかりな表情に、逆に彼は驚くもののクスリと笑っては委員会メンバーへと振り返った。

「よし!それじゃみんな一緒に夕飯食べに行くか!」

その掛け声に一度ワッと騒ぎ出した。待ちに待った夕飯。今日は何の定食だろうか?自分の好物は有るだろうか?
交わされる後輩達の言葉についつい口元が緩んでしまう。そういえば、亮はどんなモノが好みか?
おばちゃんの料理の腕は高く、他の城からもスカウトされる位な腕前だ。学園中の生徒や先生の舌を満足させる。亮も同様だろう。亮がご飯を食べていないと発覚した件からしばらく経っているが、逸れからよく同級生の竹谷や尾浜の2人に連れられ食堂へと姿を表して居る。
おばちゃんの作る味が気に入ったに違いない。
何故、食事を取らなかったは後で聞こう。
きっと亮も腹が空いている筈だから、まずは井戸で手を洗って………


「留三郎ぉ〜」

「?!」


聞き慣れた声に彼は持っていた地図をつい、グシャリと握り締めてしまった。とれない皺が付けられた学園の地図だが、彼は気に止める事なくとある方へと視線を走らせた。
其処には泥まみれにながら開かれた廊下へと顎を乗せる同級生の姿だった。

何を遣っているんだ?と声をかければ、彼は腕を廊下の上へと乗せ顎を乗せ「委員会活動が今終わった所なんだ!」なんて清々しく笑う。
まさか?と周辺を見回せば地面の上で荒い息遣いをする体育員メンバーがへばっている姿が写り込む。
久々の委員会だったのだろう。どこまで走り込んできたのかは分からないが、テスト週間で溜まりに溜まり有り余ったその体力を消耗してきたのだろうが、彼小平太の様子からしてまだまだ物足りない様子。あの滝夜叉丸がピクリとも動かないのだ。きっと想像以上にハードだっただろうに。


「それより留三郎」

「何だ小平太」

「亮に何かしたのか?」

「は?」




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