謳えない鹿3 | ナノ



スルリと何かが抜けた様な感覚がした。

それはそよそよと揺れる風とは違っていて、何故か僕はそれに対して胸の中がザワリと鳥肌を立てた。
勿論それに僕はビックリして、ヒッ!と悲鳴をあげながら周りを見渡しても何も無く僕只1人しか居ないこの廊下が凄く怖く感じた。

誰か居るの?って勇気を振り絞った声は弱々しくて自分でも凄く恥ずかしかった。
だけど、こうして居ないと胸のざわざわが引いてくれなくて、更に何かに怯えてしまう自分が嫌でも分かってしまう。

辺りを一回り見渡して見るけど、変わった所なんて何も無い。
僕を中心に廊下は前と後に真っ直ぐ伸びていて、生徒と言える存在なんて僕の他に誰も居ないのは明らかだった。

それでも誰かが、僕を気にする事無く通り抜けた様な違和感が有って、どうしても逸れだけが否定出来なかった。

きっと僕の所属している用具委員会委員長の食満先輩なら、この違和感を払って居るだろう。
そう思えば、無力な自分を更に感じて同時に食満先輩に会いたくなる。

きっと、この事を話せば食満先輩は大丈夫だ!って頭を撫でてくれる。

そうだ。

こんな所で怖がって居る場合じゃ……



ギシリと後ろの廊下から音が鳴った。



僕はまた悲鳴を上げて、先輩の居る用具小屋へと一気に駆け抜けた。























101113

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