一周年企画小説 | ナノ





  


「おはよう雅。私だ」


いつも通りの挨拶。昨日と何ら変わらない朝の挨拶をした彼は、昨日と同様に襖へと手をかけた。立花仙蔵。
今日も身嗜みが完璧な彼は、中の人物の承諾の言葉待たずに閉ざされた襖を開く。六年間ずっとこの学園で共に過ごして来た存在。敬愛してやまない親友に、彼は絶対的な信頼を寄せて居る。そして同時に確信も。
この時間帯になれば、彼は既に起床して居り身支度も整えて居る。と……。だから仙蔵は野沢の返事を待たずに襖を開けたのだった。が………。




「…………」

『…………』



部屋の中。
其処には確かに雅は居た。
ああ、どこからどう見ても雅だ。
数年前、最後の面が割れた親友が授業に出なくなったあの日、当時の仙蔵達はわざわざ町迄繰り出し彼に似合うだろうとなけなしのお金で買ったお面。
それ以来、彼はずっとその面を使用し続けた。付けやすさから考えられた面は、支度に時間がかかる雅からすればとても助かる品物であった。
以前に比べ支度の時間は短縮され、今こうやって仙蔵が部屋に入った時既に身支度を終えて居る。
だから、仙蔵の瞳に写り込む姿も…………



「…………」

『…………』



ピシャリ、シーン、そしてフルフル。
仙蔵同様に身支度を終え出していた布団を仕舞う最中の親友にピシャリと固まる。
しかし、昨日会った時よりも明らかに可笑しな点一つに脳内がシーンと停止。
すかさずの体の痙攣。
フルフルと震える仙蔵に、面を被る彼はマズイ。と持っていた布団から手を離した。しかし、今の自身の姿に起きているある事をすっかり忘れていたらしく、手放した布団が彼にのしかかる。
ポフンと可愛らしい音を立てて布団の下敷きと成った。

痙攣して居た体の震え。それが治まったと思った瞬間に、彼は悲鳴を上げたのだった。









Prettiness not to be able to permit





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