一周年企画小説 | ナノ





  


「しかし、面白い事もあるもんだな!」


ぬはは!と豪快に笑い方はあの七松小平太らしいが、それを発するのが何故か五年は組の亮であるのだから我が目を疑う。そして、その隣では正座をし背筋伸ばしちょこんと座る七松小平太。彼はおずおずと亮の様子を窺うが、『前が見えないな』と自身の前髪に手をかけた瞬間、彼の手がすかさず伸びた。


「止めて下さい先輩!」

『何言ってる、これじゃ前が見えないだろ?』

「駄目です駄目です!それだけは止めて下さい!」

キャラ設定が壊れます!と何やらメタ発言をしつつ、必死で止める様子に彼の友人達は唖然とする。
朝一番に起床したのは寝坊助で有名な七松小平太だった。しかし、彼は起きるや否や慌ただしく制服に着替え、普段より小さめの音を立てては井戸へ向かった。まさか、彼が休日に早起きするとは思わなかった同室者は音と共に起床、何が起きたと目をこすれば戻ってきた小平太が同室者の隣で正座していた。
「何があった」と、問えば、彼は涙ぐみながら「おはようございます。中在家先輩」と答える。
其処で理解し難い事が起きて居り、自身だけでは問題解決出来ないと判断し友人らを呼んだのだ。
其処で七松小平太は気付いた。
五年生の自身は一体何をしているのか?
集まる先輩方に一言残し部屋から出て行った彼は、間をあける事無く五年の彼を抱えて戻ってくた。そして今に至る。

半信半疑だった友人達だったが、ああ、本当にその通りだ。


五年の亮と六年の小平太が入れ替わって居る摩訶不思議な現象。
朝起きたらこんな事になって居た。お互い何か特別な事をした訳でもないらしい。ならば一体どうして?
そんな疑問が浮かび上がる。

だが、本人と言っても一人しか指さないが、彼は気してない様だ。その証拠に意志は自身なのに体が亮のもの、と言う不思議な感覚に手を握ったりと色々試している様だ。
ギュギュと手を開いたり閉じたりする小平太は、ん?ん?と亮の体で疑問符を浮かべる。そしてその様子に、ハラハラと落ち着かない亮の視線もとい小平太が視線向ける。

本当に可笑しな光景だ。このまま見ていても飽きないだろうが(六年い組の一人だけ)、亮は気が気ではないらしい。
現に小平太が亮の体をペタペタと触り出せば、亮はうわぁぁ!と悲鳴を上げて止めに入る。


「何故止めるんだ?」

『普通止めます!逆にお聞きしますが、何故僕の体に触れるのですか?!』

「こんな貴重な体験はめったに出来ないだろ?だったら今の内にいっぱい体験しとかないと思ってな!」

『だからといって僕の体をむやみやたらに触らないで下さい!』

「と言うより、亮その敬語を止めてくれんか?自分が敬語で話し続ける姿は気持ち悪い」

『でしたら七松先輩もその座り方と話し方を修正してください。口調だけではなく座り方迄ガサツです!』

僕はそんな座り方はしません!私だって正座なんて座学の時にしかやらない!見苦しいから正座をやめてくれ!

こんなやり取りをするのは、入れ替わった本人達位だろう。
それを眺める友人達もどうすれか頭を抱えてしまう。


「お前ら、とりあえず落ち着け」


2人を宥めたのは六年は組の食満留三朗だった。今まさに亮(in小平太)にかかろうとする小平太(in亮)は、とりあえず自身の口を塞ぐ。
それでも暴君と呼ばれ常に動き回る彼は、口を閉じる事を十秒すら出来なかったみたいだ。


『だけど留三朗!』

ブーブーと口を尖らせては、ブーイングする亮の姿は普段の亮からでは決して想像出来ない仕草。
やはり中身が小平太と言う事だけあって、普段彼が取る仕草を思いがけない人物がやると不意とキュンと来るものだ。
いや、in小平太にでは無くて、肉体の方の亮のでだ。


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