謳えない鹿2 | ナノ



 

壁数枚を挟んだ隣のクラスから聞こえてきたのは、何だか懐かしいと思えてしまった賑やかな声。
今の今までその賑わいを失っていたクラスから上がった明るい声に、それを直ぐ後ろから聞き取った僕の口元はきっと綻んでいるに違いない。
何枚もの壁を挟んでいると言うのにも関わらず、ろ組まで漏れ出すその声量は止む気配が無い。


「仲直り、できたみたいだね?」


僕の隣に座る友人に紡げば、彼はそうみたいだな。と何食わぬ顔で答えてくれた。

昨日、部屋へと戻ってきた三郎は、僕を見るなり亮を探して来てくれ。なんて言った瞬間に驚くしか無かった。

何でも、亮君を観察している中、三郎は亮君の異常を見抜き突き止めたらしい。勿論、その内容も聞いた。でも、どうして僕に?と同室者へと問えば、彼は「雷蔵は聞き上手、だから」なんて言われてしまい、続ける様に「ほら私は泣いているあいつに言ったろ?私"達"に任せろ。と」
勝手にと言いかけるも結局はは組のそして亮君の仲を戻す為と一肌脱いだ。

その間三郎は、は組のサブリーダー的な存在である生徒の元へ向かい、「亮が話し掛けに来る筈だ」と告げる為に部屋を出て行った。

僕も三郎の後を追う形で部屋を出、亮君が使用する部屋に入るも見慣れた存在が居ない事に焦った。
とりあえず、行きそうな場所と勝手に決め付けた所を当たるも全てが外れに終わる。しかし、その最中校舎の窓から覗いた先に見えた用具小屋。その小屋に向かう途中にある廊下が普段よりも暗闇を帯びている様に見えた僕は、最後の掛けとして向かった。

そして案の定其処に座っていた亮君。
まだ制服姿で寝れないのかな?と思い、彼と話を交わす。
その中で彼の言葉を一つ一つ聞いて理解し、そして三郎が言っていた通りなのだと再度分かった僕は彼の背中を押して上げた。

どう言った形で亮君がは組に話し掛け、仲を取り戻したかなんて分からないがまたあのは組独占の雰囲気が戻って来るのだと思えば、僕も嬉しくて仕方ない。


だけど、其処でふと疑問が沸き立つ。
亮君とは組の仲を戻させたと言える三郎の行動に。

以前三郎は亮君の変装テストと称しては私物盗難事件に手を貸した。
だが、今回は?
亮君そしては組から報酬などを求めていないだろう今回の件に、三郎が何も考えずに手を貸した時点で何かあるな。と悟った僕は隣に座る三郎へと視線を這わせた。

視線が宙で合った。

その瞬間、ニッと口元に浮かべた笑みにやっぱりね。と、僕はため息を吐いたのだった。
























101003

prev / next

現75-総86

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -