謳えない鹿2 | ナノ



 

「まぁな。でも、これできっと確信するに違いないさ」


そう笑っているろ組の変装名人事、鉢屋三郎の台詞に俺達は目を合わせるしか無かった。

本当かよ?と疑いの眼差しで見つめるしかできなく、それでもクラスのムードメーカーであるあいつが「鉢屋が何とかしてくれるかも知れない」とは組のみんなに話ししていたのを思い出す。
そんな俺の隣では、じゃ…この話しは僕がみんなに伝えて置くよ。とは組の中で一番背が低いそいつがバタバタと慌ただしい足音を立て、俺と鉢屋の目の前から姿を消す。
それを狭い視界で写し終えた世界は再び暗闇へと閉ざされ、其処に居るだろう存在へと向き直ればお前は相変わらずだな。なんて言われるがそんな事はどうでも言い。

「は組のサブリーダー殿がそんなにピリピリしてどうすんのさ?」

仕草からして鉢屋は腕を組んだのだろう。
だが、その中にどこか面白そうに笑った様に見えた俺は腹がたち、黙れ。と言ってやる。



本来、は組以外である鉢屋三郎の手を借りる事に酷く不快を抱く俺だが、は組一同のそしてその一員となった亮の事を思えば、俺の私情なんてどうでも良い位だ。

あの亮が突如としては組の皆と関わり合いを避ける様になってもはや数週間。
は組の仲間達何かしてはいけない事をしてしまったのかと、いまままでの事柄を思い出す一方、は組のリーダー格であるあいつももはや限界らしく同室である俺の布団を勝手に被り泣く毎日を送って居る。
勿論其れには亮の隣の席である友人が慰めに入るのだが、「亮が良いんだよ!」と何故か逆ギレする始末だ。

勿論俺とて、亮がどうしてそうなってしまったかなんて分からない。
俺達は組は相手を思いやるあまりに実技に上手く身が入らない。その為、自身より相手にばかり意識が集中し、己の身の危険に酷く疎いのだ。
そしてその度に不注意から生まれる怪我が絶えない。だが、それをさらにカバー及びサポートに入るのが亮であり、俺達は不甲斐ないとわかって起きながら亮の力に頼らざる終えなくなってしまう。

だが、亮がは組のサポートに回る度に俺達の距離は縮まっていくのがわかっていて、編入当初に比べは組に打ち解けていたのを俺は気付いていた。それに気付いていたのは俺だけでは無く、ムードメーカーであり、リーダー格であるあいつ自身も分かっていて嬉しそうに笑っているのを見た事がある。

そして一人また一人とその様子を知り誰もが亮を放っておけなくなりまるで俺達が、下級生の様に亮へと構って欲しいと話しかける様になっていた。

それを遠目でみていた俺に、一人のは組の仲間が親指突き立てた瞬間には何故か胸が暖かくなっていたのが分かった。


だからこその今の亮の行動。
不可解過ぎて分からないんだ。

初めに異変に気づいたリーダー格のあいつは泣きながら、飛び込んで来た瞬間には何が起きたかなんてさっぱりで……そんな中、亮が話しかけてもツンケンする!!と叫んだ時には、馬鹿を言うな!と、怒鳴ってしまった自分も馬鹿だ。
結局俺も亮に話しかけ、冷たい態度をとられまぁ…。その……泣いた訳であり………。

そんな訳で、俺達は組には衝撃的な事件であったそれは未だに解決出来ず、たまたまリーダー格のあいつの無様な姿を見かねた鉢屋三郎が助け舟を出した訳だ。

勿論嫌に決まっている。
俺達はほんわかは組だなんて馬鹿にされているのを知っている。
だからこそ、は組の仲間の問題は仲間である俺達自身が解決しなければならなかった。
は組の実技担当の先生は、団結力が強いのは良いことたが行き過ぎた執着は駄目だ。と何度も注意されている。それは一年の頃からで五年生となった今でも言われる位。

だが、それでも俺達は先生の言う事を聞かない。
だって、今更だろう?

固く結び付き断ち切る方法を捨てた俺達は組が、解く訳が無い。
それは亮にも当てはまるんだ。
は組の仲間として加わったその紐を、俺達は最後まで手放し見放す事なんて餓鬼臭い事はしない。
それがほんわかは組の意地でもあり、最大の長所にして武器なのだから。

どのクラスにも無い。

俺達五年は組の最強の武器なのだ。

でも、今回ばかりはは組の皆が亮に何かしらしでかした事により(実技サポート以外でた)そう言った態度をとるのならば、逆に俺達は手をそして口を出してはいけない。
むしろ、出した所で関係は更に悪化するものだろう。

今回の件と言い、以前私物を盗まれた件と言い何かと口を挟んで来る鉢屋三郎。
何かしら企んでいるに違いない。
そう気付いていた俺は口に出す事はせず、胸に静かに抱いたまま鉢屋三郎へと背を向けた。




「まぁ、頑張れよう?サブリーダー殿」










背中へとかけられた言葉が、更に俺を苛立たせた。






























100928

prev / next

現65-総86

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -