謳えない鹿2 | ナノ



 

授業が終わり、委員会へと向かおうとした所で思い出したのは委員会が休止中な事。
いつもの癖で図書室へと向かい、いつもの様に図書室で委員会活動。
その委員会活動が休みの日には、自室でテスト勉強をするに限る。それが癖ついていたらしい事に気が付いた僕は、図書室へと行く途中の足をゆっくりと翻し自室へと向かう。

廊下を歩けば下級生達が隣を通り、こんにちわ!と相変わらず元気な挨拶に僕はいつも通りに返してあげる。

キャイキャイと下級生ならではの声変わりする前の高い声は耳に触れ、その内容が脳内へと流れ込んで来た。

会話内容はそろそろ行われるであろうテスト内容のもの。

やれ、どこまでの範囲なのかやれ、あの公式の解答例はなど様々だ。
しかし、今や五年生となった自身からして見ればその内容は凄く簡単であり、当時難しく考えていた時の頃が懐かしいと思えた。

今回のテスト。夏間近に行われるテスト内容は幾らか難しくなり、解答しにくい内容だとと話を聞いている。

一応、クラス事に合わせてテスト内容は異なるも、範囲自体は大体おんなじである。
その中から出される問題の文章が半暗号化されており、解読及びややこしく入れ替えられた文面を読みとらなければならないのだ。

そうもなれば、半暗号化された問題文も出ると思われる範囲等、と言った内容を二重に勉強しなくてはならないのだ。

こう言った内容となれば流石に兵助や勘右衛門みたいに高い点数を取ることは出来ないものの、勉強次第では上を取れなくは無い。

五年生となると下級生時代の時には無かった順位表と言う物が張り出される。
これは五年いろはの三組の点数による順位表で、自身が三組の内何位であるか一発で分かるものだ。しかし、逆に言えばテスト点数が低い生徒にして見れば恥ずかしいの何物でもなく、しばらくは自身の恥ずかしい点数を皆にさらけ出す羽目になるのだから。

多分、競争率を上げる為にこう言った方法を取ったのに違いないだろう。

前回のテスト内容は散々で、それでも一位を取っていた兵助そして二位の勘右衛門は相変わらず流石だとしか言えない。

年々、テスト内容が難しく成っていくのが実感出来る。
今回のテストも頑張っていかないと。

一人でそう決意すると、前方に人がいるのに気が付いた。
よく目を凝らせば、それは映えた薄桜色で背中にある三味線は以前三郎が言っていたものと特徴が一致した途端に、一発で亮君だと分かった。




「亮君」


彼の名を呼べば此方に背を向けていた彼が、ゆっくりと振り向いた。
振り向いたと同時に此方へと向き直れば、其の手に持って居るのが忍たまの友と多くの教材だと分かる。
目元は相変わらず前髪で隠れて居るもの、本人は気にする事なくこんにちわ不破さん。と、柔らかな笑みと共に穏やかな雰囲気を生み出した。

うん、変わらない彼の雰囲気だ。

すると、彼は小さく首を傾げてはん?と言った様子を醸し出す。どうしたのだろうか?


『あれ?不破さん委員会の方は?』

「ああ、今はテストが近い事から委員会活動は全体的に休止中なんだ」


僕の答えに彼はそうでしたか。と笑う。
亮君は未だに委員会に入って居ないが為に、こう言った時に委員会が休みなる事を知らないのは当たり前だ。
今回のテストは実技のテストに続いて大切な物だ。これは進級や卒業に関わる重要性があり、落としたり低い点数ばかり取っているとそれらが叶わなくなる。

だから皆、必死で合格点を目指して勉強するのだ。
そう言えば、彼が以前いた学園でもこう言ったテストはあるのだろうか?


「向こうの学園でもこういったテストはあったの?」

『いえ、筆記と言ったテストは一度も有りませんでした』

「………え?!」


彼の言葉に僕は驚いた。筆記と言ったテストは無い?
いや、しかし其れでは文字や漢字と言った読み書きの勉強は一体どうやって覚えて来たのだろうか?


「じゃ、読み書きはどうやって?」

『実習中に敵方から奪った書物からです。筆記の授業を行えば敵方からの襲撃を受けやすいとの事で、一度も有りませんでしたので』


「それじゃ、今回のテストはキツイんじゃ……」

僕がそう言えば、亮君はハハハ。とどこか乾いた笑い方をする。
彼に取っては初めての筆記テスト。と言う事なのだろう。なるほど、だから亮君の手の中にある教材の量が多い訳だ。
教材を見ながらどういった風にテストを行うのか参考にするのだろう。

そこで、ふとした考えが浮上する。
僕もこれから自室に戻って勉強する所だ。
三郎もきっと部屋にいるのだろうし、ならば……。






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