謳えない鹿2 | ナノ



 

どうするべきか?
頭を抱え悩む亮だが、そんな薄桜色の視界にとある色が映り込んだ。
同時に、ピシリと固まった亮の存在に4人は気づく事はない。


5人が居る長屋前廊下。
その廊下の向こう側から一人の忍たまが姿を現したのだ。彼はギャイギャイと騒ぎ立てるその存在が、仲の良くない三年生と四年生だと理解した途端に、またかアイツ等は。なんて、苦笑いを零した。
そして、喧嘩する彼等へと近付けば、お前等!と大きな声を上げたのだった。




「こんな所で喧嘩するな!」


いきなり頭上から大声を上げられてしまえば、喧嘩していた彼等はその肩を震わせた。
同時に見上げれば其処にいた存在に、彼らは真っ青になる。


「な……七松先輩」


彼は周りに迷惑をかけるな。場所を考えろ!と困った様に腕を組めば、彼らは身を縮こませるしか無い。


「何でまた喧嘩なんかをしてるんだ?」


そう聞くも、喧嘩をしていた彼らはあちこちへと視線を走らせる。これと言って、はっきり答えないもんだからため息しか彼の口から出ない。
まったく、お前らは…‥。と言いかけた所で、彼の視界にとある色合いが映り込む。
ん?と向き直れば、自身が探していた人物の姿が映り込んだ途端に、お!亮!と名前を呼び彼の元へと近寄った。

名を呼ばれた亮はびくりと肩をあからさまに震わせ、アハハ。と口端をびくりと歪ませた。


「何だ、お前も一緒に居たのか!」

『え、ええ。まぁ色々と有りまして』


目の前に移動してきた彼と出来るだけ目を合わせない様に、明後日の方角へと視線を走らせる。
だが、前方から感じる期待する様な視線は酷く居心地が悪いものでしかない。
わかっている。彼、七松小平太が言いたい事を。確かにあれは大変失礼なことをしてしまった。そう抱く亮だが、あの時はそうするしか無いと判断した為他の作が無かったのだ。だが、その行動故にまたもや強いられるとは…‥しかも内容が内容だ。
出来る訳がない。


「なぁ!一回だけ何だよ!」

『ででっ出来ませんよ!そんなの!しかも、目上の方である先輩にあの様な失礼な事は二度と……』

「あと一回で、どうしても思い出せそう何だよ、頼むよ、亮!」


パシン!と、両手を合わせられ、な?と首を傾げる仕草は幼い子供の様だ。しかも、彼が行えば懐く大型犬の様な幻覚が見え、一瞬目の前がぐらりと眩みそうになる。

む、……無理です。
と顔を逸らして言うも、小平太は、なぁなぁ!と亮の肩を掴んでは体を揺らす。
ガクガクと揺れる体に亮はあわわわ!と混乱しつつも、ちゃっかり拒否している辺りが更に滑稽だ。

そんな不思議な光景は彼ら4人の目を、そして長屋から騒ぎを聞きつけた四年生が部屋から顔を覗かせる。

なんと言う羞恥か。

下級生の様にせがんでくる上級生の姿に、遠くではコソコソと小さな囁き声が亮の耳へと届く。
このままでは不味い。
この状況が続いて、変な噂が立つのは目に見えている。

亮は意を決し、反れていた顔を小平太へとむき直した。





『先輩』

「何だ、やってくれるのか?」


ワクワクと言った表情を浮かばせる小平太へと引きつりながらも、にっこりと笑いかけた亮。しかしその刹那、左門と三之助の2人が驚いた声を上げた。同時に目の前に居た筈の亮の姿が消えた。


三木ヱ門と滝夜叉丸は驚き何が起きたのかと目を丸くする中、小平太だけがあ!と外へと視線を向ければ必然と彼らの視線も其方へと向けられた。

其処には左門と三之助を脇に抱えた亮が立っている。
そして一礼しては、失礼致します!
と、その姿を瞬時に消したのだった。



ぽかんと取り残された四年生2人だったが、隣では遣られた!と悔しさを露わにする六年生の姿が其処に合った。
しかし、彼は私は諦めないぞ!亮!と何やら意気込んでは、その場から立ち去った。









辺りは静かになり、静粛が包み込んだ。















「何だったんだ、あれは」

「さ、さぁ?」




















100818

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現41-総86

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