謳えない鹿2 | ナノ



 

食堂へと向かう廊下から飛び出た3人は、真っ直ぐと廊下を駆け抜けて行った。
あまりにも勢いよく走るものだから廊下を歩いていた忍たま達は驚き、自身が巻き込まれまいと急いで脇へと避難する。
3人が走り去った後に遠くから、スミマセン!と尾鰭を引く様な声。

避難した忍たま達は走り去る3人の背中を見る。巻き上がる土埃の中に混じる五年生の制服、きっと彼が言ったのだろう。
そう思い、その場で茫然としていた彼らだが、それだけでは無かったらしい。


彼らが立つ廊下に再びどこからともなく地響きが鳴り渡る。


何だ?


此方へと徐々に近付いてくる地響き。それは先ほど3人が出て来た廊下の方角の様で、疑問に思った彼等はふと廊下を覗き込んだ。


のが、まずかったらしい。


突如として廊下から現れた人影により、廊下を覗き込んでいた忍たま達はものの見事に踏み台にされてしまった。
ムギュ!ブハ!とそれぞれ踏まれた後に悲鳴を上げ、ビタン!と廊下に熱い接吻を交わしたと同時に、頭上から声が降り注いだのだった。



「んもぅ!あんた達のせいで見失ったじゃないの!!」
「どうしてくれるのよ!」


背中にくのたまを乗せ、尚且つ罵倒を浴びる彼らにして見れば不幸でしかない。
勿論、その場に他の忍たま達も居合わせて居る。彼らはその近くに居なくて良かった。と、安堵のそして同情の眼差しが彼らへと向けられた。
だが、それにいち早く気付いたくのたま達は何?!と周りに居た忍たまを睨み付ければ、何でもないです!と蜘蛛の子が散るかの様にその場から慌てて立ち去って行った。


「困ったわね、まさか、左門の奴が先に行動に出るとは思わなかったわ」

「それ以前に、何で亮君を連れて逃げ出したのかが気になる」

「……もしかして、亮君、あれを左門達に?」

「まさか。だって彼大人しそうな性格じゃない?」


其処でいくつか会話を交わした彼女達。
そして、他のみんなにも。ええ、そうね。
と、それを最後に交わし忍たまの背からやって降りたくのたまは、やって来た方角へと再び戻って行ったのだ。






















「なぁ、俺達、出番これだけか?」

「みたい。だな」










くのたまに踏み台にされた2人は、同時にガクリとうなだれ気を失ったのだった。












100812

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