謳えない鹿2 | ナノ



 

1日に受ける授業を全て終えた頃には、天高く登っていた太陽の日差しは傾き始めている。もしかしたらあと、数刻もしない内にこの太陽は夕日へと名を変えるのだろうか?。そんな事が脳裏を一瞬よぎる。

しかし、森に巣があるであろう烏達がその方角へと飛びさり背をまだ向けない辺り、今直ぐに日が落ちる事はないと知らせている様なものだ。

これならば、安心である。

さて、残るは放課後の委員会活動のみ。と言う時間帯。
今日も頑張って委員会活動を!!と両腕掲げた所ではい、ハイハイ、ストップ。と肩に手を当てたくなる。

委員会活動を止める理由。
勿論ある。




テストが近い。




その理由の為にここ数日ばかりは、委員会活動休止となった。

身体を鍛えるだけが忍者ではない。
忍者がこれまで築き上げてきた歴史、行動に、忍者としての種類、武器、弾薬、火器、火薬、医学、兵法。
まだまだ数え切れない程の、忍者の知識を覚えなければならない。それは、テストと言う形で示される。

知識の中に詰め込まれた歴史等は、大切なものばかり。早い話し、それをちゃんと理解し覚えているかと言う確認をとるためなのだ。

このテストで良い点数を取ろうと張り切り、自室又は図書室にこもり忍たまの友を開き睨めっこをしている。

筈。


だが、彼等はこの放課後こそが危険だと直ぐに察した。

委員会活動がないこの時間帯、テストが近いこともあり忍たま達はテスト勉強をする為1人になって居る確率が高い。

そして、それは言わずもがな彼等三年生が思い浮かべるとある五年生が、不可解な行動を取るくのたまに襲われやすい事でもあると感づいた。

後半から話を聞いた藤内も加わり、5人で彼、亮をくのたまから守ると決め込む。
しかし、守ると決めたその本人が、今自身らの目の前に居なければ意味がない。
だから、彼等は亮を探し長屋そしてクラスへと向かう。しかし其処に目当ての人物が居なかった。

ん?さっき迄其処に居たのに。
あれ?今居た筈なんだけど。

そう言った言葉ばかり彼等の耳へと届く。
それが何度も続けば、直ぐに見つかると思っていた彼等の中に降り積もるのは不安。

と言う名の塵。

それは僅かながらも山と成りつつあり、積もる様子に止まる気配は無い。授業を終えた彼等は其処からずっと亮を探し回るが、その存在を見つける事が出来て居なかった。

そんな時に作兵衛がもしかして、既にくのたま達に!!と真っ青になるのを直ぐに止めた。


「作兵衛!そうやって直ぐに決めつけるなよ!」

「でも、現時点で亮君が見つからないじゃないか!」


アワアワとふためく作兵衛と数馬の2人。
ほら、そんなに慌てないでよ。こう言った時に落ち着かないと!と、止めたのは藤内ただ1人である。
ただでさえ亮君がくのたま達に狙われているのだ、此処は俺達が冷静になっていち早く行動しなければ……。

彼がそう言えば、静かに聞いていた2人はやっと落ち着きを取り戻す。



「そうだよな、俺達が慌ても意味が無いよな」


ひとまず落ち着いた2人に、安堵のため息が小さくこぼれ落ちた。

よし、そうと決まれば2人一組でペアを作って………










ん?ペアを作って?

藤内は、其処で可笑しな違和感を感じた。
2人でのペアを作る事に対して、頭数が何故か足りないのに気が付いた。
自身、作兵衛、数馬、左門に三之助。










「だぁぁぁ!やっちまったぁぁぁ!!」


藤内が言葉をかける前に、どうやら作兵衛が気付いたらしい。











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