謳えない鹿2 | ナノ



 

「あれは……五年のくのたま達」

桃色の制服は、忍たまと異なり色が同じらしい。その為、どのくのたまが何年生なのかがわからない。しかし、何年もこの学園に在籍して居ればいやでも顔を覚えてしまう。
しかも、それがよく悪戯を仕掛けてくるくの玉ならば尚更である。
くの玉の彼女等は2人であり、尾浜、竹谷、亮の座る席の前へと立つ。

そして一人のくの玉が亮へと話しかければ、持っていたスプーンを置きにこりと笑いかける姿を彼等が捉えた。
先に話しかけた彼女と隣にいるもう一人のくの玉、彼女等は交互に話しながら亮が相槌をうつ。

しかし、そこで亮が口を開き、何かを紡ぐ。
その口元は相変わらず緩やかな笑みを浮かべており、嫌なものだとは感じない。
時折、向かいに座る竹谷が口を挟んでくるみたいだが、その度に彼女等の鋭い眼力で身をすくめてしまうみたいだ。


「今度は五年生のくのたま達だ」

「でも、三年生のくのたまとは雰囲気が違うよね?」


茂みに隠れながら観察していた三年生とは違い、今居る五年生にはそれらしき雰囲気は全く見受けられない。
むしろ好意的であり、亮へと話しかける2人はどこか嬉しそうなものを感じる。


勿論、その異なる光景は彼等に新たな疑問を抱かせる原因となる事に、彼女等には全く分からないものだ。
すると、満足したのか彼女等は楽しそうにその場から立ち去った。

彼女達が居なくなった後、尾浜と竹谷が詰めるように問いかけるが亮本人は訳が分からない。と言う様子で小さく首を傾げるだけだった。



「何だと思う?」

「やっぱり分からないな……」


うーん。と、腕を組ながら悩む作兵衛と左門の傍ら、亮君とご飯食べたかったな。と呟く声はとりあえず無視しておく事にした。

三年生そして五年生のくのたま、それらに関わっている亮の存在。

謎は新たな謎を呼び、まるで解けない暗号文の様だと思えてくる。
そんな3人の存在から切り離された食堂。

カウンター近くでとある一人の教師がある食べ物を残した事に気づいたらしく、食事を作ったであろう食堂のおばちゃんが怒号の声が上がる。
それにすら気付かない3人の思考は、どうやら深い所まで沈んでいるみたいだった。















100807

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