小説置き場 | ナノ

嘘だと言いたかった。

しかし、今目の前に叩きつけらるている密書に綴られるそれは明らかに真実であり、嘘と言ったものでは無い事を物語っていた。

名前を見つけ出した。

そう書かれた内容は全て暗号化されており、それを解読するのにさほど時間は掛からなかった。
しかし、こうやって脳へと伝えられる事実に、私は銅器で頭部を殴られた様な感覚に襲われる。


「馬鹿な……有り得ない!」



有り得ないのだ。
綴られる文字が語るそれは信じがたい真実で、脳内ではそれを断固拒否する。

だってそうだろ?
三、四年生の年齢である筈の彼、否彼女はとっくに二十を超えており敵方であるしかも、孫市の的となる石田軍総大将石田三成の妹君であるその文字に自身の目を疑う。
有るはずがない。
名前は私たち六年生より年下であり、確か以前話を聞いた時には名前は兄では無い姉が居る。それは本人自身が言っていた事であり、嘘では無いだろう。

しかし、やはりおかしいのが名前が私達より年上と言う事。

同じ時を刻み、同じ様に此方へと飛ばされているのならば年齢はその時のままに違いない。
しかし、以前、孫市に名前の様相を伝えた所で「1人心当たりが有るがお前が探している後輩とは異なるだろう。何せ彼女は私よりも年上なのだからな」と言っていた。
まさか、それが名前だとはその時の私は思いもしなかった。


「どうなっている!」



分からない事ばかりのこの世界。
婆沙羅と言った自然界に存在する筈のない力。
それを使いこなす孫市達の様な特殊な人間。
同じ地名が存在するのに、私達が居た世界では無い日の本。
そして、探していた名前の存在。
















「…………仙蔵君?」





















私の名を呼ぶ、鶴姫の声が遠く聞こえた。

ただただ、地面が酷く揺れ動いた様な感覚が私を襲った。

































101121


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