百合籠 | ナノ


野沢雅。

一年い組在籍で、あのお面と格好は入学当初のままだと言う話を聞いた時私はビックリした。
恥ずかしがり屋だからお面をしているのかな?寒いから上から何かを羽織っている訳では無いと、い組の子から話を聞いた。
言葉はカタコトで、長い髪を結って居るらしい。
長次に聞けばいきなり現れてはいきなり姿を消すらしい。言いたい事だけ言って消えるのが野沢なのか?と私へと聞くも、私は野沢とは一度しか合った事が無い。それ以来、秘密部屋と言っていた野沢の部屋に行ってもガランとしていたり、長次が良く行く図書室でもくまなく探した所でやっぱり野沢の姿は見当たらなかった。

長次に、私は嫌われたのかな?と不安を胸に抱き聞いても、だったら初めから小平太に声を掛けたりはしないだろう?と言う。それじゃあ、嫌われていない?と聞けば。きっと。と返してくれたその言葉に救われた様な気がした。

い組の先生にも野沢はどこにいますか?と聞いても分からないとしか言ってくれない。
先輩にも聞こうにも親しい先輩が居ない為意味が無い。

だったら、どうやって探せば良いのだろうか?
手当たり次第に当たれば良いのか?
長次に聞いても考えが浮かばない。って言う。どうしようどうしよう。
どうすれば野沢に会える?ぐしゃぐしゃになりそうな頭を抑えて、その場にしゃがみこめば長次がポンポンと頭を撫でてくれた。

「長次」

「野沢…見つかる。きっと」


だから……
長次が何を言いたいのか分かる。だけど……












『気分、奈良?』


驚いた。

聞いた事のあるその声は私にかけてきた時と同じもので、どこか心配した雰囲気が混ざっている。私はすぐに顔を上げればすぐ目の前に、狐のお面の子。野沢が立っていた。



「野沢!」



さっきまでのぐしゃぐしゃが嘘みたいに消えたと思った途端に、やっと見つけたと言う暖かな何かが私の体を動かし野沢へと抱き付いて。
勢いに任せて抱き付いたのが悪かったのか、私と野沢は一緒にビタン!!と床の上に転がってしまった。でも、痛みより野沢に会えたのが嬉しくて、そんなものは直ぐに飛び去った。


「野沢!野沢!」


ぎゅうぎゅうに締め付ける野沢の体は意外に小さくて、もしかしたら私より小さいのかも知れない。
頭の上では野沢が窒息、寸前!と言っていたが今の私の体は、言うを聞かない。

隣では長次が呆れた様子で溜め息ついたのが聞こえたけど、良かったな、小平太と言ってくれた。


「野沢!お前何処に行っていたんだ?探したんだぞ!」


野沢に抱き付いている胸から、顔を上げればやっぱり其処には狐のお面。
野沢は、色々。とどこか困ったように言った所で、私は野沢の今の状態に気が付いた。

「野沢、制服は?」

一年生が着ている筈の装束を、今の野沢は着ては居なかった。
変わりにいつも羽織っている女者のブカブカの着物を着ている姿は、やっぱりおかしかった。




『俺、事情、色々』








それしか言わなかった野沢に、私と長次は一緒に首を傾げるしかなかった。















100612
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