玉響 | ナノ



真っ白だった世界は突如として新たな世界へと移り変わる。
目まぐるしく変わりゆく世界の中、私とそれだけが変わらず佇む所は不思議で仕方ない。

この波に飲み込まれてしまえば、これから起きる先の未来をどれほど楽に過ごせるだろうか?
しかし、そんな思いを掻き消すかの様に世界は青々とした彩りを取り戻し、パチリと一度瞬きすれば見覚えのある森の中へと変わっていた。

ああ、思い出のある。あの『森』だ。



足元に転がるそれ。
最早、肉の塊となってしまったそれに見える末路は、ただ朽ち果てるしかなく土に還り草木を育てる糧となるしか無い。
もしかしたら、森に巣くう動物が跡形も無く食すかも知れないが、これは流石に腹を壊しかねない生き物だ。
食べる事はあまりオススメはしない。

誰に対して言っているのか分からない中、ふと感じた後ろの存在にもう嗅ぎつけたか。と笑う。

そんな自身の足元を飢えた息遣いで風が抜ける。
駆け抜けた風は唸り声を上げ、着せられる布を引き裂き筋肉の付きがよいその肉へと牙を通す。

皮が剥がされ牙が肉に突き刺さる度に、飛び散る水音が水面へと跳ねる魚の音に似ていた。

音に浸るように残されたたった一つの瞳を閉じる。

パシャパシャ鳴るそれはまさに河辺の音そのもので、想い出されるのは幼き過去の日々。

いや、今となっては想い出とされる過去は、全てが砂の様な物なのかも知れない。

無意識にすくった様な仕草を取る両手の中には、赤く色づくクナイと滴る雫。
しかし、そんな掌に感じるのは暖かい雫ではなく、さらさらとこぼれゆく砂の感触。

一粒一粒が鮮明な過去であり、その小さな粒をこの指先で摘むには無理な事だ。
しかし、いくつも重ねられたら記憶は束となり、こうやって僅かな瞬間ながらもすくいだす事が出来る。


嫌いでは無かった過去。
黄金色に輝く日々は当に青春と言う言葉が似合っており、その中で一時ながら共に笑みを零した世界は、もうこの手を伸ばした所で届く事は無い。
否、その黄金色の日々。それに終末を打ったのが、この両手である。
まぶしかった世界を赤に染め、滴る世界に塗り替えた時の『彼』の顔は今でも記憶の中に残る。

自身へとかけられる悲痛な叫び声。それはあまりにも胸を締め付け、頭の中をかき乱すのだ。

だから自身は『彼』に終末を打った。
開かれていく瞳孔を瞳に映し出し、その輝いた眼からこぼれ落ちた雫に自身は目を閉じた。

同じ景色が脳裏でループする。
グルグルと周り続けるそれは、まるで転がるボールの様で止める手を差し伸ばさない限りそれは周り続けるだろう。


風が吹いた。
どこか人の叫び声の用に聞こえたそれは、私の背中へと当てられ装束の裾が揺れた。

同時に、自身の足元が揺らめく。
そして世界が暗転した。
























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