玉響 | ナノ



結局は期限内の提出が出来なかった体育委員会に彼女はやっぱりな。と抱く。そもそも、くのたま体育委員会委員長である彼女が海棠院の近くで息をそして気配を殺し一緒にいたのだ。

見つけ出そうにも無理な話。そして結果、予算を分けてもらうと言う事が不可能となったのだ。

まぁ、そもそも初めからくのたまの予算をくのたま会計委員会委員長である峰が勝手に移す事なんて出来る訳が無いのだ。

つまり単なる余興。

すると、それを知った体育委員会委員長の彼、七松小平太はギャイギャイと騒ぎ立てる。「きたないぞ海棠院!」と、しかし詳しく言えば予算を移す事が出来ない訳ではない。

それには忍たま会計委員会委員長の彼のサインが必要なのだが、彼がそう簡単に承諾する訳がない。
だから、端っから意味など無い。それでも騒ぎ続ける七松小平太に海棠院は右ストレートを溝にぶち込めば、嘘な位に周囲が静になった。


阿保が。




廊下の上で悶える小平太に吐き付けたのを思い出した頃には、空は茜色と押し寄せる紺碧の空を眺めていた。
今日の授業も全て終えて、後は委員会だけ。と言うだけだが、くのたま会計委員会は生憎お休み。何せやる仕事をちゃんと期限内に終わらせている為にこうやって休む事が出来る。

委員会の後輩達は休みの日でも委員会活動をしたい!と意気込むが、それは委員長の彼女がきっぱりと切り捨てた。
『何だ?忍たま会計委員会の様になりたいのか?』と……。

同時にイヤです!!などと必死紛いな声につい苦笑してしまう。


思い出した後輩達のやり取りを脳裏の隅へと追いやり、とりあえず部屋にでも戻るか。と振り向いた時だった。

彼女の後ろからとある声が上がる。海棠院が何だ?と怪訝な顔付きで振り返れば、腰元に大きな衝撃が走ったのは同時。

ぐふ!と出そうになった声を殺して、よろめく体を咄嗟に出た右足だけで耐えた所を誰か拍手してくれ。

ギリギリと締め付けてくる下の圧迫感が離れない。

これはもしや……。

峰は振り向けばやはりそこには見慣れた下級生の姿が存在していた。



「海棠院先輩!」


にっかりと笑みを浮かべるのはくのたまには無い無邪気なもの。しかし、同時にある疑問が彼女の中に浮かび上がった。




『おい、神崎』

「なんですか?海棠院先輩?」

『此処、くのたま長屋何だが』




何で忍たまのお前が、しかもたった一人でいる?と、問い掛けるも彼、神崎左門は可笑しいな?なんて笑いながら言うもんだから、峰はため息が出るしかなかった。
一人でしかもくのたま長屋にやって来る事が出来る度胸は、上級生である六年生位だ。

五年生ですらくのたま長屋は怖く滅多に何かがない限りはこんな所に来やしない。

だからこそ、彼が一人で来た事に峰は不思議で仕方ない。


だが、よく考えれば神崎の特性で忍たま長屋から此処まで来る事はさほど苦ではないのだろう。

ぎゅうぎゅうと締め付ける神崎に、お前、委員会は?と聞けば、行く途中だったんですよ!でも、そしたら海棠院先輩が居て!



いや、其処はそのままスルーして欲しかった。

しかし彼は現在進行形で迷子であるのは確実。これを無視しようにも彼は峰から離れる様子はない。

目の前にチラつくのは2つの選択。
遠くではほら、さっさと決める!と言う友人の響く声に眉間がピクリと動く。
他人事だと思って……。


『(覚えてろよ………)』小さく舌打ちした峰は未だに腰元に手を回す神崎を見下ろせば、その視線に彼が気付く。相変わらずにっかりと笑っている神崎に、峰は頭を掻き忍たま会計室に送る。
峰がそう言えば神崎はありがとうございます!と返す。離れない様に手を繋ぐ。

確か、以前彼が迷子だとくのたま長屋に入り込んだ時も、こうやって手を繋いで向こうの長屋へと送って行った時がある。
あの時は確か、神崎は一年で自身は三年。
そう思えばコイツは進歩していないのか?そんな考えが脳裏を掠める。


まぁ、とりあえず今は忍たま会計委員会へと送り届けてやらなければ。







何故かニコニコする神崎の手を引き、峰はくのたま長屋から歩き出した。
















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