短編夢(メイン) | ナノ


吐き出す様に呟いた言葉は、滴る血反吐と共に床へと落ちる。
唇の端っこから滴るも、気にする事なく腕を組み視線を落とす。同時に揺らいだ床の上を転がる2つのモンスターボールに、それは静かに足を伸ばせばかかとの部分でピタリと止まった。
同時にグッと力を込めてやれば、ピシリと走る罅が広がったと同時に躊躇いもなく踏みつけた。

車内に響き渡るボールが壊れた音とともに、ガタンとまた一回揺れた。
パキパキと散らばるボールの破片を再び踏みつけて、それは歩み寄る。
落ちていた視線を緩やかに上げれば、這い蹲る2つの存在にそれは目を細めた。唇が歪む。同時に覗くウィンディに似た牙が顔を覗く。


『噂とは異なるな?』

何故だ。と歩み寄った靴先には、未だに這い蹲る双子。
黒と白のコートを着込む双子は小さな唸り声を上げ、起き上がる様子が無い。生きているだろうな?と、白い方の手の甲を踏みつけてやれば、高い悲鳴がその喉から上がる。

『何だ?気絶のふりだったか?』

今更リングマにすら通用しねぇよ?と言葉がこみ上げる。ギリギリと棘の様なヒールが片割れの手の甲へと深くのめり込む。すると、双子の片割れを踏みつける彼女名前はすぐさま右手で何かを払った。
それは炎であり、名前目掛けて放たれた炎はまるで虫を払うかの様な仕草により見事に弾かれ消される。
宙を走った視線の先には先ほど倒したばかりのエンブオーとジャローダの2体が倒れ込んで居る。
先ほどの炎はエンブオーか。
今にも消えそうな炎を揺らし低い唸り声を上げ、その大きな体を大きく傾け倒れた。
そのエンブオーの傍らで倒れているジャローダを見つめる。起き上がる気配が無い。ふと痛いと主張するのは自身のわき腹で、それがジャローダの叩きつける攻撃からきた痛みが今更やってきたらしい。

響き渡る振動と共に再びなるガタンと言うトレインの音。
ゴォ…と自身の真後ろから上がる名前のポケモンの声。彼女は振り返らず、やはり可笑しいか。と自身の顎へと手を添えた。

地下の番人とも呼ばれているサブウェイマスター。

以前ハイリンクの向こう側で戦った双子も手応えが無かったが、今相手したばかりのこの双子は歯ごたえ所かバトルした気すら残らない。

そう。
この感覚はまるで……
『あ?』


不機嫌そうな声が生まれた。
同時に名前の後ろに控えていたポケモンが、大きな音を立ててその場に崩れ落ちる。興味無さそうに自身のポケモンが瞳へと映り込んだその瞬間、名前の真横を何かが横切った。
そして間を開ける事無くヒール下にあったその感覚を失う。
すると、更に奥のトレインへとアーケオスによって運び込まれていくサブウェイマスターの双子に、ああ、やっぱり?と首を傾げて見せた。



「お客様、ポケモンバトルでのトレーナーへの攻撃は、ルール違反となって居ります」


倒れたポケモン越しに地を這うかの様な低い低い声が、トレイン内をいっぱいに埋め尽くす。

ガタンとまた揺れる。


「酷いポケモンバトル。僕あそこまで酷いバトルみたこと無い」

同様にそれも低く、ゾクゾクと背筋を凍らせる声。気の弱い人間ならば、すぐに怖じ気づくだろうが名前はクツクツと喉底から笑みが零れる。
ああ、ほらやっぱり。

静かに振り返れば先ほどバトルした双子とは異なる白いYシャツと青いネクタイを結ぶ、成人した双子が其処に立っている。走って来たのだろうか?息が切れているながらも、鋭い眼差しは名前へと向けられて居り、反れる様子は無いようだ。

ああ、やっと本物が登場か。
となれば、今し方バトルしたあの男女の双子は此方側のギアステーションの駅員か、または彼らと親しいトレーナーに違いない。

倒れてしまったレジロックを見下ろす。
申し訳無さそうに無機質な声を広い、名前はレジロックをプレシャスボールへと戻す。

変わりにヘビーボールからバンギラスを、ハイパーボールからメタグロスを出した。
首を小さく傾げウィンディ牙がその存在を主張する。
その様子にゴクリと喉を鳴らすサブウェイマスターノボリとクダリだが、胸の奥底から湧き出し止まらない高騰感に口元が無意識に歪んでしまう。
楽しみで仕方ない。目の前でギラギラした瞳を輝かせる存在に。



「インゴとエメットの言っていたトレーナーですねクダリ」

「うん、間違いないねノボリ」


向こう側の彼ら双子に瓜二つのサブウェイマスター。インゴとエメット。
緊急入院した病院からライブキャスターで連絡が入った。

―狂ったトレーナーが向かう筈だ。気をつけろ―と、
包帯を巻き、痛々しい姿を液晶画面に全治2ヶ月を医者から言われた双子から。


2人はボールを構える。

仇を取らせて頂きます。
あっちに居るインゴとエメットの分!
逸れからトウヤ様とトウコ様の分も。



彼女が笑った。

『素晴らしい建て前だな?』

と、釣られる様にノボリとクダリが笑う。

ボールから現れたシャンデラとデンチュラが唸り声を上げ、負けじとバンギラスとメタグロスも声を荒げた。



「君、名前は?」

『名前。名前だよ白い廃人さん』

「何故、この様なバトルを?」

『?……。此処は廃人が集うバトルサブウェイだろ?黒い廃人さん』








ゆらりと指先がノボリとクダリへと指さされた。


















『すっごい勝負、あなた達は魅せてくれるかい?』



バンギラスとメタグロスが駆け出した。同時にシャンデラとデンチュラも駆け抜けた。








狂人VS廃人






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