短編夢(メイン) | ナノ




貴方が好きだと言ったそれは青と白でした。
貴方が好きだと言ったその色は、貴方の学年の色であり貴方の大好物な色でした。
同時にこの組み合わせが大好きだと言って、私が好く桃色を取っては青と白をあてました。
青と白の二色は私と貴方とお揃いの黒髪に、酷く冴えていました。初めはその組み合わせは可笑しいと苦手だと抱いていたものがありました。しかし彼が言うのです。
とても似合ってる。
名前の長い髪には、この青と白が綺麗まじる。と、
大好きな彼にいわれてしまっては仕方ありません。
貴方は本当にこの二色が好きですね?
二色?いや三色だ。
白と青ではなくて?
白と青と黒。私と名前のお揃いな黒髪。だから三色だ。

そう言っては手を伸ばしました。私の黒い髪に、貴方と比べるとちょっと短い私の髪に。手ですくい指の間をすり抜けるのが感じられる。
そして笑うのです。

『名前に似合っているよ』







前世のお話でした。
今から数百年も昔のお話でした。
行儀見習いで入った私と立派な忍を目指して入った貴方。出会いはなんでしたっけ?
ああ、そうです。私が間違えてお豆腐を二丁も頼んでしまった事から始まったのでしたね。それ以来度々廊下先で顔を合わせたり、合同授業で共に組んだあの日から私達は自然と共にいる時間が増えて……
ええ、過去のお話で御座います。
前世と言われ、有り得ないと言われる世界のお話です。

何故か私は覚えておりました。
この世界に生まれた瞬間、赤ん坊と呼ばれるその頃から私の脳内にそれは残っていた。理由なんてわかっています。
燃え上がる学園の中で彼は、私を抱き締めながら言ったのです。

来世で待って居てくれ。


だから私は待ちました。彼の好いた青と白とそしてお揃いな長い黒髪を纏いながら。彼が私を見つけやすいようにその三色を必ず持っていました。

彼は来ました。
この世に生をうけ早二十年。彼氏も作らず、貴方が迎えにくると言う言葉を抱き隣を空けていました。彼の為に、ずっと待って待って待ち続けた中、やっと彼は来ました。


綺麗な女性と共に。


見間違える訳ありません。彼でした。
癖っ毛だと悩んでいた髪の毛はばっさりと切られていました。それでも透き通る白い肌に、女性の様に長い睫、仕草、話し方、笑い方。
彼でした。間違いなく彼でした。

しかし、彼の隣にはとてもとても綺麗な女性がいました。似合っているボブヘアーに魅力的な細い足、ハープの様な透き通った声は彼女にとても似合っており、そんな彼女と手を繋ぐ彼は幸せそうに笑っていました。

彼女は鮮やかでした。ファッションに気を使っているのがわかります。上から下まで鮮やかであり目を引きつけるのです。

ああ……なんて綺麗な方でしょうか……。本当に綺麗な女性でした。彼にはぴったりです。綺麗な彼女に綺麗な彼。美男美女とはまさにこの二人を指すのでしょう。


私は近くの裏路へと入り込みます。
彼と彼女は私に気が付く事なく通り過ぎました。

白をメインとするスカートがコンクリートの上に広がりました。その中へと飛び込むのは透明な雫。
じわじわと布に浸食していく様を私は眺めるだけです。

私はバカでした。
彼が絶対迎えに来ると言う保証は有りましたか?
彼が前世から記憶を引き継いで、生まれてくると誰が言いました?
必ず彼が迎えに来るとは決まっていないのです。

彼は私を忘れていました。
いいことなのかも知れません。不味い忍者食を食べ続ける日々も、悲鳴をあげ限界だと泣き叫ぶ体のサインを無視し武器を握り締めた業火を思い出す必要が無い。
過去に縛り付けられない彼は、本当の幸せを手に入れたに違いない。

足元に転がる破片が笑いました。

お嬢さん、俺なんかどうだい?


そう言っているかのように聞こえました。ぐずぐずと啜る私の鼻が笑いました。情けない鼻声で、笑いながらそれを掴んだ。


『言われなくたって』


お相手してやるさ
私は転がる破片を手に取った。










さようなら大好きな兵助君


不思議と体が軽かった。
髪を切ったから?好きな色を選ぶようになったから?
理由はわからない。だけど、大切な何かを失った筈な私はとても軽く、心のそこから笑うようになった。









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