方程式の惨(さん) | ナノ


□禍津日ルート


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知らない。

知らない。

あんなモブキャラがでしゃばって来るトリップ夢なんて!


私は知らない!







禍津日ルートで胃を満たす







誰か忍たまキャラに会えないかな?って忍たま長屋をぶらついて居た矢先からの三年生達の声、本音を言っちゃえば六年生達と遊びに行きたかったんだけど、未だに委員会や任務か何かのせいで遊びには行けずじまい。
だったらまた五年生に囲まれて1日を過ごせばいいかな?と思いながらとりあえず三年生の部屋の襖を開けた。

スパン!と襖が鳴るも私は気にしない。
だってどうせ壊れたとしても留三郎君が直してくれる。だから問題ない。と思った私は、予想通りの三年生2人の姿に胸が躍った。
可愛らしい声で2人の名を呼べば、2人は直ぐに顔を真っ赤にして私の名前を呼ぶ。うんうん、この2人は私側の様で安心。私が何故この長屋に居るのか?忍たまキャラと絡みたくて!!などと正直に言える程私は阿呆ではない。私は迷子と言う言葉を使い、彼らに私を守らないと。と言う保護欲を沸き立たせる為に言葉を使う。

うん!完璧!

と抱いた時だ。

数馬君の影で何かが立ち上がる。
同時に揺らぐ薄桜色と五年生の制服に、え!?と目を丸くすれば、其処にはまさかな亮君が立っていた。何で亮君が三年生2人の部屋に?と疑問を抱いていた時には、目の前には彼は居なく慌てて振り返った所で瞳に映った彼の腕へとしがみついた。

本当は五年生長屋迄の道なんて知っている私だが、せっかく捕まえた亮君と一緒に居られるこの瞬間を逃がす訳には行かない。

自身のスタイルの良さは誰でもない私自らが知っている。男共の目を釘付けにさせる胸の谷間にエクササイズで細くした腰に、形の良いお尻。
私は自身の胸を亮君に擦り付け、上目使いで彼を見上げる。見上げた角度でも見えない鉄壁の前髪に、これは完璧にキャラ立ちしてる。なんて思ってしまう。
そんな事より亮君自身と言えば、頬や耳を染める訳でも無くただ私を見下ろして居るだけ。

あ、あれ?亮君には此は効かないのかな?

ともあれ、彼と居られるチャンスを見逃さない私は亮君に五年生長屋へと案内をお願いする。だって亮君は組の子と会う約束をしてるんだよ?案内と言うのは建て前で一緒に付いて行けば、モブのは組に会えるんだもん!これは利用せずには居られないでしょ?

だから亮君にどう?と首を傾げれば、何故か答えでは無く、質問で返されてしまう。
うっわ!亮君って質問を質問で返してくるキャラなんだ!ちょっと面倒くさい。と言う思いは胸の中へガッシャンコね。
質問で返されてしまった私は上手く切り返す為に、藤内君と数馬君の2人へと同意を求めれば彼等は直ぐに頷く。
多数決三対一で天女様勝利!
なんてくだらないテロップを背中に背負い、私はもっと自身の体を亮君へと寄せる。よし!これで大丈夫!
私は亮君の腕を引っ張り五年生長屋へと歩き出せば、釣られる様に彼も歩き出す。何も言わない所を見ると、文句はないらしい。

うんうん!良い調子。

本当の所は亮君に目を付けて居たんだよ私。だってだって!こんなにキャラ立ちしている子が忍たまの登場しないモブキャラな訳ないじゃん!は組もそうだけど、何より亮君って絶対アニメに出てくるキャラだと思う。これは推測だけど、原作ではキャラの9割り近くが黒か茶色の髪の毛で覆い尽くされている。
アニメオリジナルで例えればタカ丸君の金髪やおしげちゃんの様な物、亮君の薄桜色なんて変な髪の色はきっとアニメオリジナルだからに違いない。
そう考えれば、19期や20期辺りにでも亮君はテレビに出て来る筈だって。私は考える。そうなれば必然とモブは組も顔を覗かせるだろう。

だから私は亮君の事をいっぱい知りたい。亮君の誕生日、血液型に星座、好きな食べ物に得意な武器。
背中に背負う三味線なんかも気になる。



「ねぇねぇ亮君、亮君の好きな食べ物は何?」

『ないです』

「え!?ないの?何で何で?!」

『好きな物を食べた所で、己の肉体が強化される訳では無いので』

「誕生日は?」

『さぁ、知りません』

「えっと……血液型とか星座は?」

『けつえきがた?せいざ?』


ああそっか。
そう言う事ね。亮君はまだ公にされていないキャラだから、詳細設定とかまだなんだ。うーん。難しいな。

亮君の身なりから見ての設定は、上手く想像出来ない。
背が高い癖に結構細い。見た目だけじゃなく、こうやって亮君に触れた事によって彼の体型が嫌でもわかる。うう…私より腰や腕が細いな。羨ましい。

亮君にしがみつきながら、廊下を歩いて居ると先にある2つの別れ路が見えてきた。
その廊下の右を進めば四年生長屋そして、真っ直ぐ突き進めば五年生長屋がある事なんてわかりきっている。でも其処は知らない振りをして反対方向へと向いちゃおう。そして、亮君にそっちは違います。だなんて、手を引いて貰う。そうすれば彼は自然と私と手を繋ぐ形で、長屋へと案内するに違いない。
こうやって一つずつ小さな積み上げに寄って、私の魅力に周りは気付かされていく。


「あ!亮やっと見つけた!」

「!?」


聞き慣れない声。
私は亮君に捕まったまま、顔を上げれば五年生の制服を着る2人の生徒がパタパタと走り寄ってきた。
ああ!この2人私知ってる!亮君の腕を引いて廊下を走っていたモブの忍たまキャラ!
やったやったわ!早速出会っちゃった!どうしようどうしよう!私まだ心の準備が!!


「亮が遅いから迎えに来ちまったよ」

『すみません』

「で、三年生は何て?」

『高評価でした。と』

「良かったじゃないか亮!そんなに高評価なら今度女装の課題が出たら亮に教えて貰うよ」

「あ、あの!」

「あ!狡いぞ!亮君、僕にも教えてよ!」

「あのあなた達って、亮君のクラスメートだよね!!私、学園でお世話になって…」

「お前は別に良いだろう。小さいんだから充分女に見える」

「なっ!人が気にしている事を!!」

「ねぇ!私の話を!!」

「俺を見ろ!体格のせいで女には程遠いんだよ!ってな訳でその時は宜しくな亮!」

と言う事で、ほら亮行くぞ。食堂でみんな待ってる!
そう言った彼は八君みたいな爽やか笑顔を浮かべては亮君にしがみつく腕が伸びた。
ムカつく!何よこいつ!!私を無視して何様?!モブの癖に腹が立つ!

私は更に亮君へとしがみ付いては離れまいと力を込めた。
だけど、しがみつく私の腕を彼は触れた瞬間に眼にも見えない速さで激しく叩き付けたのだ。


「いったぁ!!」


バチン!!と電気を一気に浴びた様な私の腕は痛みで感覚を失ってしまい、一瞬にして亮君から手が離れてしまった。
同時に衝撃に耐えきれなくなった私は、後ろの廊下へと激しく尻餅をついてしまった。ビタンとありきたりな音を出してしまった私は、直ぐに目の前の存在へと見やればモブの子が亮君の腕を掴んでいた。


「あ!!亮君!!」

「おら行くぞ!お前が来なくちゃ、みんなでご飯作れないだろ!」

「前は忍者食だったからね、今回はみんなで豪華な物を作ろうと話して居たんだ」

「と言ってもバイキング制だからみんなが好きなモン作るだけだがな……」

『お二方は料理が出来るので?』

「いやからきし駄目だな!」

「亮君、こいつに料理を作らせるなよ?食べた日には明日の日の出は拝めないから」

私が居るのにも関わらず亮君とモブキャラは、何も無かったかの様に会話を交わす。何で何で?気付くでしょ普通。何を遣ってるの?私は尻餅ついて居るのよ?普通助けるものでしょ!?


「隠し味はレモンとさくらんぼで良いと思うんだ」

「どの料理の?」

「え?親子丼の」

『なるほど。把握しました』

「理解してくれて助かるよ亮君」

「え!?何が?」


モブ2人は尻餅付く私を視界に入れる事はなく、亮君と共に彼等は歩き出した。

二手に別れる廊下を左へと曲がり、その先にある食堂へと3人は行ってしまう。













「何なのよ」









何なのよ!?

廊下に座り込んだまま、自身の下唇を噛み締める。

私は天女様よ?

現代から未来からやって来た貴重な人間何だよ?
小説だけでは済まされない。忍たまと言う誰もが行けず願い乞う世界に、こうやって飛ばされた特別な存在。

私は忍たまキャラに大切にされる存在。
大好きなキャラクター達みんなに両手で包まれ、傷を付けまいと守ってくれる。

補正によりモブに殺される事は無いけれど、今の私は怒りで満ち溢れて居る。
可憐な天女様は血を知らない。
純粋な綺麗な手を汚す事はしないし、したくも無い。
だったら、この怒りをどう沈めるか?
簡単よ。
私を大切にしてくれるみんなにちくっちゃえば良いんだもん。
飛び込んで、泣きついて、
相手にされないと
は組の子が
私を無視して
手をあげてくる。って
大切にしてくれるみんなの事だから
きっときっと
は組のモブに手を出すだろう。
そう、
私は天女様
モブ如きに
忍たま世界満喫を
邪魔させる訳には行かないでしょ?


















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