長編置き場 | ナノ




「同種人の子供?」


かき混ぜていたおたまをすくい上げ近くの器へと入れる。同時に揺らめく炎を止めれば、カウンターに頬杖を着いていた双子の弟がコクリと頷いた。


「うん、ここを少し下がっていった所にある野原分かるよね?あそこに同種人の子供っぽいのがいたの」

「貴方の見間違えではなくて?」

「六メートル先も見える僕の視力が見間違えると思う?」

双子の弟クダリは母さんの血が強かったのか、デンチュラの血筋と共に様々な能力を引き継いでおります。獲物を狩る習性をもつデンチュラの血は、視力聴力など身体能力が高い。
クダリの見間違えだと思うものの、背中にしがみつくデンチュラまでも見たと言ってしまえばそれは確実性をもつ。

もしクダリとデンチュラの言っている事が正しいと言えど、私はそれを信じる事ができない事情が御座いました。


「同種人の子供が都市から離れる事は許されないのは、貴方も知っているでしょうに」

「当たり前。一般常識じゃん」


我ら同種人とは、二本の手に二本の足を持つ種族の事を指します。個体を持つポケモンと少しばかり異なる私達同種人。その姿は今から数千年前に絶命した人間と呼ばれる種族に、姿、形が酷く似ております。
しかし、かつて人間と呼ばれる種族は、ポケモンの自由を奪い縛り、私利私欲の為に手足として使っていたと聞きます。その様子はまさに奴隷。一匹のポケモンが倒れ息絶えれば、同じ種族のポケモンを捕らえ動かなくなるまで使い続けると聞きます。
其処で立ち上がったのが各地に眠る伝説のポケモン達。彼らは何百年と人と戦争を続け、勝利を勝ち取った。

だが、人間は狡賢く、知能と共に繁殖力も高かった。そんな彼らを確実に潰して行ったのが、いまの都市の治安を守る軍隊の原点だと教わりました。
人間が居なくなって数百年後、突然変異のポケモンが生まれる。それが私達同種人と呼ばれる種族。何年も前に絶滅した人間の形をしたポケモン。人型と呼ばれるポケモンにしては、人間に酷く似ている。だが、親元となったポケモンの特性や体の一部を引き継いで誕生した新たな種族。

軍は人間に似た姿をしたポケモン、同種人が、人間と同じ道を歩まないように組織ぐるみで育成に励む。そのかいもあってか、同種人は人間ではなくポケモンが進化をする過程での分岐点、そして個体が異なる種族が卵を産んだ際確率によって生まれるか否かの分岐点として認識されるようになったので御座います。
わかりやすい言えばパールルが進化すればハンテールとサクラビスに進化する者も居れば、いきなり同種人へと進化を遂げるのも居る。同じ様に種族の異なるポケモンが卵を産んだ際、生まれるのがポケモン叉は同種人赤ん坊のどちらかと言う事。

同種人が生まれる確率は未だに解明されて居らず、都市では相変わらず議論が続いていると聞きます。

話がそれましたね。

同種人の姿が昔に滅んだ人間に似ている。この事から、同種人がポケモンと同じ生き物であり同等の存在だと認識させる為に、幼少期から都市で管理している学園へと入学させて居るのです。卒業式は入学してから約十年後。野外見学以外外に出る事を許されない生徒は、十年間その学園内で生活をします。
勿論親に会うことはできます。しかし、都市から出る事は許されてはおりません。学園内での面会となるのですから。


「学園に入学する歳では無いのでは?」

「でも、大きかったよ?多分、十歳は行ってるんじゃないかな?」


尚更で御座います。
軍が同種人の子を見逃す訳が有りません。

こればかりは、見過ごす訳には行かないでしょう。


「クダリ」

「分かってるよ」

まだこのあたりに居るよね。見つけたら、都市に連絡するよ。
その言葉に私は安堵します。私もその子供を発見次第保護し、都市に連絡せねば……

ふと、いつの間にか隣に立っていたクダリは、重なっていた器を一つ取り出来立てのスープをよそう。
僅かに傾けては、美味い!と零しては相棒のデンチュラへと分ける。


「クダリ、行儀が悪いですよ!」

「美味しく作るノボリが悪いんだよ!」



ね?シャンデラ!
私の後ろに居る友人へと声をかける。
いきなり話しを振られ驚いたシャンデラ。私の友人になんて事を…!悪気なく笑う弟へと私は遠慮なく制裁をくわえてやりました。














130322


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