謳えない鹿 | ナノ



手紙が来た。
その差出人のそれを目で追った時に無意識に私は口元がゆるんでいた。

開けていた戸を閉めた私は室内へと戻りながら、手紙を開き中に綴られた文字を読んでいく。
内容は先生の身の回りで起きた最近の出来事や放置していた畑に野菜がいっぱい育ってきた事。今度、3人で遊びに来なさい。と言う内容だった。
最早卒業し一人前の忍者として生きている私やあいつであれば、いつでも先生の元へと遊びに行く事が出来るも1人他の忍者学校に編入と言う形で私達から離れていった亮を思えば「あいつ、休みとれるのだろうか?」と、誰も居ない部屋の中で1人虚しく独り言を言っていた。

卒業試験を終えた次の日の早朝に、何故か身支度を済ませた亮と先生が学園の門前に立っていた時には本当に驚いた。

私とあいつと亮の3人で連絡が取りやすい場所に住み、遊びに行くからな!と川の字で寝た時に話しして矢先がこれだった。
突然の出発に戸惑ったものの、学園長の言う言葉は確かな事ばかりで私達は亮を見送る事しかできなかったのだ。

まだまだ学び足りないと言われた亮はどこか分からない忍者学校へと編入。
どこの学校かと聞いても、学園長はお前は今や立派な忍者の1人だ。後輩の居場所位は自分の腕で探して見ろ!と言われてしまった数週間前。


唯一のかわいい後輩がどこかに行ってしまうその背中は、実技実習の最中に散っていった友人達の背中に似ていて私は酷く不安になった。
だから私は直ぐに亮が編入した先である忍者学校を調べようとした時だ、一緒に卒業したあいつが止めに入った。

何故だと理由を聞けば、今のあいつは変わった周囲の環境を学んでいる最中だ。それを邪魔しようとすんじゃぇよ。と言われてしまった。

先生には心配性だと学園長には過保護過ぎると言われる始末。
それでも、1人しか居ない後輩に構いたくなるのが先輩である。
あいつには干渉し過ぎるなと言われたが、2人が去った後に亮の編入先を知ったら俺にも教えろよ?なんて、笑っていた。

きっと、嘔吐先生は俺達が亮の編入先の忍者学校を探す事を見越して、こんな風な内容で書いたに違いない。


「相変わらず、読めない先生だ」


静かに腰掛けた私の目の前には小さな囲炉裏。


今頃、亮は何をして過ごしているのだろうか?






そんな事を思いながら、私は先生から届いた手紙を静かに炙った。


















100615

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