謳えない鹿 | ナノ



「あれ?小松田さんは?」


校門前で掃き掃除をしていたヘムヘムに聞けば、ヘムヘムは身振りで小松田さんが居ない理由を教えてくれた。
小松田さんは今用事で事務室に籠もっているらしく、夕刻時迄は出れないらしい。

だったら、事務室に行けば小松田さんは確実に居るよね?とヘムヘムに聞くも、ヘムヘムは駄目と言わんばかりに首を横に降っては手を×のマークへと作り替えた。

「何で?」

僕は小松田さんに今度の連休の外出届けを出しに行かなければならない。本当は先生に出さなくちゃいけないんだけど、丁度先生は出張で居ない。
それに少し遠くまで出かける為、僕は朝一番に学園を出かけるから朝から先生に提出する訳には行かない。
しかも、遠くまでの外出届けは事務員に。と言う決まりがある。だから、これは先生に渡しても意味が無いんだ。

直接、小松田さんに外出届けを出してから遠出するサインも書かなきゃならないし。

でもヘムヘムは行っちゃ駄目って言っている。



「あ!兵太夫」

「あれ?乱太郎?」


向こうから走ってやってきたのは同じクラスの乱太郎。
此方へとやって来た乱太郎の手には一枚の手紙。もしかして?と向かってきた乱太郎に小松田さんに用事?って聞けば、目を丸くしてよく分かったね!と驚いた声を上げた。


「実は小松田さんが居る事務室に行こうとしたんだけど、他先生が行っちゃ駄目って……」

「え?!何で?」

「小松田さんは大切な用事が有るから邪魔するなだってさ」

「大切な用事?」


夕刻時までは出れない用事。さっきヘムヘムが言っていた事を乱太郎にも伝えれば、どんな用事なんだろうね?と首を傾げる。
2人で校門前で考えてもその理由がなかなか出て来なくて、僕はヘムヘムへと理由知ってる?と聞いても首を左右に振るだけ。

本当は早くこの外出届けをだしたいのだけれど、小松田さんが居る事務室に行ってはいけないのならば仕方がない。





「とりあえず、夕刻時まで待ってみようか」

「そうだね」





夕刻になれば事務室へと行っても良いんだよね?
そうヘムヘムに問えばヘム!と肯定してくれた。


今は我慢するしかない。僕と乱太郎はとりあえず教室へと戻る事しかできなかった。













100614

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