謳えない鹿 | ナノ



さて、今日は此処までにするか。

そう告げた先生は開いていた忍たまの友を静かにしまい込むも、五年は組の生徒達はあれ?と疑問符を浮かべた。授業を終える鐘は未だに鳴っては居ない。しかし、先生は授業で使った物を片付けていくのだから未だにこの現状について行けない。

ざわめく教室内。勿論亮の隣の席に座る彼も不安そうにそわそわした様子である。
そんなは組の生徒達を気にしないと言った様子で、先生は近くに置いてあった荷物を掴んでは教卓の上に置いた。


「おまえ達一人一人に手紙を渡す」


一人一人の席へと周り白いその手紙を直接本人へと渡される。
勿論静かに正座して座る亮へと渡され、白い手紙をみる限りは可笑しな点は見られない。そこにあるのは先生が書いた達筆な自身の名前だけである。

一通り皆へと渡された手紙に、何だろうな?とワクワクした空気がは組の中で沸き立った。
アチコチでは恋文だったりして!と楽しそうな空気に、亮は首を傾げた時だった。先生はゴホンと咳払いをした。


「この手紙は明日の課題内容の詳細が記されている」



と、言った途端にざわついていた教室が一気に静まり返った。


「この手紙に記されている内容は2つ。文字と、人の名前。
文字は「合格」と記入されている。もう一つは人の名前。今回の課題は六年生から1日逃げ隠れる内容となって居る。
記入されている名前は自身と組む相手の名前だ。2人一組で行動するのが絶対の決まり。相手は最上級生である六年生だ。その為のハンデだと思え」

淡々と述べる先生だが、誰一人としてピクリとも動かない。先生は質問がある奴は?と言うがリアクションはやはり無い。
亮はおずおずと手を上げれば、亮。と名を呼ばれた。


『えっと…、武器の使用制限はあるのですか?』

「今回はクナイと手裏剣のみ使用可能だ。火薬といった爆発物は不可能だが煙幕弾は構わない。」

『では……先ほどの「合格」とは?』

「六年生が捕まえる相手の2人のうちの一人が言う言葉だ。手紙の中には合格と書かれている者と書かれていない者の2人に別れる。
書かれている者は相手の六年生の手紙に捕まれるターゲットとしてされている。書かれていない者は相方となるもう一人を守る形で逃げる事を優先しろ」

『範囲は学園内のみですか?』

「そうだ。明朝から夕刻時まで学園内であればどこでも良い。勿論、隠れる方法は問わない。両者深い傷を負わない限りは肉弾戦も良しだ」

『夕刻時まで逃げ延びた後はどうすれば?』

「狼煙があがる。それで、自身の教室へと戻れば課題終了」

他に質問がある奴は?と言うも、やはり誰も手を上げる所か動く気配すらしない。すると、丁度鐘が鳴った所で先生は、今日の授業はこれで終わり。と告げる。
本来ならば皆で立ち上がって一列をするのだが、立ち上がる気配が全くしない。

そんなは組に先生は小さなため息を吐いては、教室を出て行った。


亮は手紙を広げようとするが、隣の席の彼は石の様に固まったままである。
よくよく見れば隣の彼だけでは無くクラスの全員が微動だにしない。

『?』

隣の彼の顔を覗き込めば、その顔色はすこぶる真っ青である。
あの……と控え目に亮が声を掛ければ、は組の中から突如として声が上がった。


「明日って明日って明日って?!」

「嘘だろ?!オレ何にも作戦考えて居ないって!!」

「だめだ、次の朝日が拝めないよ……オレ…」


慌てふためく者、肩をおとす者など本当に様々である。
隣と前の席にいる彼等は、無理だ。遺言書書こう。なんて言う始末だ。


『大丈夫ですよ。逃げて隠れていれば問題ないですよ。きっと』

と、相変わらずのホワンとした空気に、亮は六年生の実力を知らないから言えるんだよ!と何故か半泣き状態で言われてしまった。



100608

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