謳えない鹿 | ナノ



普通ならば、先生の授業を聞きながら筆を走らせるのだが、午後の授業は実習と言う事になり、亮は忍たまのともを開きながら、隣の席に座る彼に今どこまで授業内容が進んでいるのかを話しを聞いている最中である。
初めは忍たまの友を開いているだけの亮だったが、隣の彼の「教えてやるよ!」と言う言葉により事は始まった。

やはり、ちゃんと読み書きといった形で学んでいない為、文字は以外に汚かったりする。それでも隣の彼は親切に教えてくれて、その様子を見ていたほかのは組の生徒達も集まりだし、ちょっとした大人数で亮へと勉強を教えて居た。
初めは隣の彼のペースでやんわりとした流れだったが、集まってきたクラスメートにより賑やかなものへと変わっており笑う声か時折零れる。

と、廊下をバタバタと走ってくるその音に何人かの生徒が気がつき、顔を上げたと同時には組のクラスの扉がガラリと開き、一人の生徒が入ってきた。


「ニュース!大ニュース!」

「何だ?何かあったのか?」

急いで走ってきたのかその生徒は肩で息をするかのようにゼィゼィと苦しそうに呼吸をする。勿論、その様子に気がついた亮の周囲に生徒も何だ何だ?といった様子で教室へと駆け込んできた彼へと視線が集まる。一気に教室内の視線を集めた彼だがそんなことなど気にせずにそのまま言葉を続けた。

「今度の課題内容の相手が、六年生って言う話!!」


彼がその言葉を発したと同時に教室内は行き成りシーンと静まり返ってしまった。しかし、一方の亮は訳が分からないと言った様子でポカンとする。と、誰かが持っていた一冊の本がパタンと床に落ちたと同時に、は組からはえええええ!!!???と驚愕の声が一斉に上がった。


「六年生ってあの最上級生の六年生か?!」

「なんでまた六年生が相手なんだよ」

「詳しい内容は?!」

「其処までは知らないけど・・・」

「何でだよ!!前の演習でコテンパンにされたってのに!」

と口々に零れるのは絶望感と驚愕が含まれる台詞ばかり。中には、俺、また骨折覚悟で行くよ。や、俺なんか朝日拝めるかわからないっての。等と様々な言葉が溜息交じりで次々と出てくる。
それは授業内容を教えていた隣の彼も同様で、はぁ、と落胆の色を隠せないものだ。亮は隣の彼に、何かあったのですか?と聞けば彼は何処か遠い目で教えてくれた。

「亮は知らないのも当然だよね、偶に実習や実技演習、課題演習とかで六年生の先輩方が相手になるときが有るんだ。だけど、やっぱり最上級生ってことも有るだけに、先輩方凄く強いし手加減を一切しないから六年生が相手になると俺達めちゃくちゃボロボロにされてさ・・・」

「中には本気で相手にしてくる先輩もいるから、怪我人が絶え無いんだ」

「俺は関節外されたし」

「俺なんか骨折もんだっての」

一気にはぁ、と肩を落すは組に、亮はそうなんですか。と口元がヒクリと引きってしまう。

「そうだ、亮。中には気をつけないといけない先輩が何人か居るんだ」

と真剣に亮に詰め寄ってきた彼に#薄桜色は疑問符を浮かべれば、生徒のうちの一人が一枚の紙を持ってきては亮の筆を拝借しスラスラと筆を走らせた。

「まず、は組の善法寺先輩。先輩は不運委員会の委員長を務めていて、よく落とし穴とかに落ちる不運体質らしいけど、クスリの知識が新野先生に次いで豊富で演習中に薬といったモノで人間の五感を狂わせて来るんだ」

彼が説明しながら紙に書き上げたのは歪(いびつ)な形ではあるが、特徴を捉えている似顔絵が描かれている。

「は組の先輩と言えば食満先輩もかなり武道を齧っているから、真正面から遣り合うのは絶対だめだぞ!」

「次にろ組の暴君だな」

『暴君?』
亮の質問に筆を持つ彼はなんともいえない様子で筆を回し、苦味をかみ締めた。
「一見見た目は普通の先輩何だけど、体力が底なしだから長期戦は回避することがお勧めだな」

『底なし?』

「体育委員会ってのがあってな、裏裏山までマラソン往復や塹壕堀で何処までもいってしまうくらいの体力の持ち主」

『そ、それは・・確かに底なしですね』

「んで、その暴君の歯止め役が図書委員会委員長の中在家先輩」

『無口で背が高い先輩ですよね?』

「会ったのか?」

『はい、昼休み中に図書室で』

「中在家先輩は縄標の使い手で、的中率がかなり高い。いくら林の中を移動していても見つかれば終わり。的を外すことは無いんだ」

話を聞けばなんとも癖のある先輩方のようだ。似顔絵で描かれるは組みの六年生のうち一人は分かるものの、それ以降は筆が止まり話しを聞く限りは食満先輩、暴君と呼ばれる双方は分らない。あまり上級生との関わりがない為かいまいち顔が浮かび上がってこない。
そして、その六年生が相手となる演習がいつ行われるかも分らない。及び内容がはっきりしない今は深く考えないほうが良いのかもしれない。

静かに考え込む亮は未だに騒ぎ立てるは組の彼等を眺めながら、思考を巡らせた。

『(い組の先輩の名前があがらないのは理由があるのだろうか?)』


ふと、疑問に思った亮は、隣に座る彼へと聞こうとするが、前回は本当にとんでもない目にあったのだろう。
目が半分死んでおり、苦笑いせざるおえなった。
















100522

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