謳えない鹿 | ナノ



やっと午前の授業が終わり、昼飯が食べれる!と思い、急いで教室を出たが良かったが不思議な事に、いつまでたっても目指す食堂まで行けない。

おかしい。

道は間違えて無い筈なのに。作兵衛が必ず俺と一緒に行く事!と言って居たが、俺はもう三年生だ。いつまでも誰かと一緒にどこかにいく訳には行かない。
だから、今回は一人で行くと決め、腹の音が終了の鐘が鳴ったと同時に向かったが……

「どうなってるんだ?」

食堂迄はこんなに時間は食わない筈。
どこで見違えたのだろう?そんな事を考えながら歩けば、見覚えのある後ろ姿に俺はラッキーと思いながら駆け寄れば相手は俺に気が付き手を振った。

「滝夜叉丸先輩!」

「やっぱり次屋か」

「先輩大変です。食堂が俺から遠ざかっていきます」

そう言えば、先輩はまたお前なぁ…なんて、ため息をつかれた。
しかし、俺は何もしていない。先輩、何に対してため息ついて居るんですか?なんて、出かけた台詞は先輩の隣に居るもう一人の存在により打ち消された。


「あれ?あの時の六年生?」

と言えば、先輩の隣にいた薄桜色の長髪の先輩は俺へと微笑む。

『こんにちは』

「こんにちはッス」

「あれ?亮は次屋と面識があるのか?」

『昨日ね』

と、笑うその笑顔は昨日の時同様に暖かく、和むものを感じられる。制服は同じ六年生の物を着て何かを包んだ布が、彼の背中から顔を覗かす。

「亮、紹介するよ。こいつは後輩の次屋だ」

『宜しくお願いします、次屋さん』

「え?あ、はい、宜しく?」

って、それ所では無かった。今、滝夜叉丸先輩は目の前に居る六年生の名を呼び捨てにしたでは無いか?
あの暴君とも呼ばれている七松先輩に対しても必ず、敬語を使う先輩が。

今の六年生は一癖も二癖もある何だか食えない先輩ばかり。中には先輩を敬え的な発言な人もいる為、下級生は口調に気を使っているのだが……。

すると、木下先生の声がどこからとも無く響き渡れば、亮先輩?は、では、また。と言い残しては向こうの廊下へとその姿を消していった。
後ろ姿をただ呆然と見送っていた俺の頭を、軽く小突いた先輩はやれやれとため息をつく姿が瞳に映り出す。「食堂に行くんだろ?」

ほら、行くぞ。と、腕を引かれながら俺は、先ほど亮先輩が行ってしまった先へが気になったが、それを滝夜叉丸先輩が遮る。


「お前、いつも富松と一緒に行ってただろう?」

なんで、今日は一人なんだ?なんて言われた俺は教室を出た時に思った事を言えば、先輩は此だから無自覚は。なんて言われてしまった。
だが、先輩の小言よりも俺は先ほどの先輩の方が気になって仕方なかったりする。


「先輩、今の良かったのですか?」


そう言えば、先輩はん?と視線だけを俺に向けるが、すぐさま前へと戻された。


『亮の事か?』

「タメ口で話して、後で呼び出されても知らないっすよ」

「それは無いな」


なんて、きっぱりと答えた先輩に、その自信はどこから来るんだ。と言ってやりたい。


「亮は六年生の制服着てるが、話しを聞けば五年生らしい」

「先輩には変わらないじゃないですか」

「しかし、前の学園では三年生だったらしい」

「は?!」


滝夜叉丸先輩は一体何を言ってるんだ?そう言えば、五年に編入生が入ったと言う噂を聞いた。
もし、仮に先ほどの彼がそうだとしても何で三年生が五年生へと………


まさか?



「飛び級ッスか?」

「私はそう聞いたな」


マジか?飛び級って言う単語はまぁ、聞いた事のあるもののまさか、自身と同じ学年の編入生がいきなり五年生へと飛び級とは。
信じがたい話しだ。


「それに、もしかしたら私達四年生とタメかも知れないと本人が言っていてな。それでも先輩に代わりはないと私は言ったが亮が私達しかいない時はタメ口で構わないと言ったのだ」

なるほど、だから先ほど滝夜叉丸先輩は亮先輩の事を呼び捨てにしていたのか。確かに、タメ口で話していた滝夜叉丸先輩に対して亮先輩は気にもしてない様子だった。
そう思えば、先ほどの彼はちょっと面白い先輩だな。と俺は抱いた。




「滝夜叉丸先輩」

「何だ次屋?」

「こっち、食堂じゃないッスよ」

「合ってるんだよ!こっちで!!」













100423

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